創薬

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2020年5月7日

  新型コロナウイルスの新薬やワクチンの研究が、猛スピードで進んでいる。

   このうち新薬は、1種類を開発するにも普通は10年以上の期間と数百億円の経費が掛かる。新型コロナでは新薬研究に併せ既存薬から有効な薬を探し出そうとする動きも進んでいるが、これは一刻も早い対応が必要なためだろう。創薬に要したコストは、回収しないと製薬会社が存続できなくなり、次の新薬の開発資金も確保できない。それで薬価が高いのだ。

   薬価は引き下げを目的に2年に1度改定されており、2021年度からは毎年改定されるようになる。ただ、19年度は消費税増税に伴う臨時改定があったので、実際は18年度から毎年引き下げられてきた。既存薬とともに高額な新薬の価格まで下がり、製薬会社は創薬意欲を減退させただろうし、病床で新薬を待つ患者たちはそれを憂慮していることだろう。

   薬価が下がれば、患者の負担は軽くなり、医療費に投入する国費も抑制される。ただ、家計や国の財政を優先させた結果、創薬事業が滞ったり、新薬を待つ患者を意気消沈させるとしたら本末転倒。薬の使命は、経済でなく命を守ることにあるからだ。新型コロナの新薬が切望されている現状を見れば創薬の重要性は明らかで、この機に新薬の開発資金を安定的に確保する方法が編み出され、薬の真の使命がしっかり守られるようになることを望む。(林)

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