⑥ライブハウス運営 杉村原生さん(41) イベントは白紙の状態、新たな試みに活路

  • コロナに負けるな, 特集
  • 2020年5月6日
存続に向け、さまざまな方法を模索する杉村さん※撮影のためマスクを外してもらいました

  「人は、その生きざまを人に見られている。人生そのものがライブだと思う」。ライブハウスや音楽スタジオを運営する会社「LIVE LIFE(リブ・ライフ)」=苫小牧王子町=の由来だ。臨時休業中もその名に込めた思いは変わらない。「リアルなステージでしか表現できない物もある」。無観客ライブをインターネットで動画配信するなど、厳しい環境に立ち向かう新たな取り組みも始めた。

  ◇   ◇

   「音楽の仕事をしたい」と2004年3月ごろから貸しスタジオ業を始め、07年に同社を設立。全国区のミュージシャンを苫小牧から送り出すため「もっと育成面に力を入れたい」と夢を膨らませていたところ、新型コロナウイルスがまん延した。2月28日の道の緊急事態宣言後、イベント中止が相次ぎ「会社の経営が一気に厳しくなった」と振り返る。

   ライブハウス「エルキューブ」は国の発信情報を参考にしながら、湿度表示機能付きの加湿器を導入した。喉などの潤いを保てるようにし、客に入場後の手洗いやうがい、マスク着用の協力を徹底して促した。

   しかし、イベントの延期や中止に歯止めがかからず、函館の2号店を含めキャンセルは2~4月で大半の30本を超えた。5月は白紙の状態だ。

   国が緊急事態宣言を全国に広げ、道の休業要請対象になると、環境はさらに厳しさを増した。何よりも客や従業員の安全を考え、録音やリハーサルのスタジオは4月23日から、ホールは同25日から、いずれも5月15日まで臨時休業にした。

   このままでは経営が成り立たない―。「人に何かを与えられる場所」を目指して設立した「リブ・ライフ」の火を消さないために、新たな取り組みを次々と始めた。

   営業再開後に使えるドリンクチケットやTシャツなど、オリジナルグッズの通信販売を4月6日から開始。商品の購入がライブハウスの支援につながる仕組みだが、これまで同店でライブを楽しんだり、今後のイベントを待っていたりする音楽ファンから注文が相次いだ。「津々浦々から反響があり、感謝しかない」

   無観客ライブの動画配信にも活路を見いだす。当初は、休業中の施設使用が認められるか行政から明確な方向性が示されず、「どんどん手足をもがれていくような感覚。われわれの業界はどうしたら良いのか」と心が折れかけた。しかし、動画撮影が認められ、4月25日にバンド5組のライブ配信を行った。

   今後は、独自にインターネットで出資を募るクラウドファンディングも始める予定だ。苫小牧の音楽界のために「できる限りのことをしたい」と希望を持ち続ける。(高野玲央奈)

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