国内最北、道内唯一となる国立博物館は基本展示室や特別展示室、シアター、ミュージアムショップなどで構成。先住民族アイヌをさまざまな視点から紹介する。衣食住にまつわる道具をはじめ、舞踊や儀式に使われてきた用具など資料約1万点を搬入し、約700点を定期的に入れ替えながら展示する。
テーマは「ことば」「世界」「くらし」「歴史」「しごと」「交流」の六つ。見せ方など趣向を凝らした。例えば「ことば」のコーナーはチセ(家屋)のいろりを再現し、音声や映像でアイヌ語由来の地名を紹介。文字を使わず言葉で伝えるアイヌの口承文芸を、肌で感じてもらいながら学べるようにした。
基本展示室の見学時間は70分間を想定しているが、駆け足で見学したいニーズも踏まえ、展示室中央にプラザ展示を用意した。ガラス張りのショーケースを円形に配置し、六つのテーマの代表的な資料を飾ることにより、30分ほどでアイヌ文化の基礎を理解できるよう工夫した。
床から天井まで約6メートルという広い空間を生かし、鳥の●【92a8】製をつり下げたり、儀礼に使った木をあしらったり、アイヌの世界観を大事にしながらテーマに沿って配置。子守りを見守るとされるモモンガは「くらし」、羽が交易の対象だったオオワシは「交流」、コタンを守るカムイのシマフクロウは「世界」のゾーンに飾った。
資料は「アイヌ文化を知らせるプラットホーム」(アイヌ民族文化財団)として各地から集めた。これまでに報道公開された資料としては、釧路管内厚岸町の遺跡分布調査で発掘されたイタオマチプ(板つづり舟)、樺太の霊送り儀礼イヨマンテでクマをつなぐために使われた太いくいなど。地域ごとの特色を意識しながら展示する。
メモ 鉄骨造り3階建て、延べ床面積約8600平方メートル。サイズはおよそ130メートル×40メートル、高さ20メートル。ポロト湖周辺の稜線に調和させたデザインになっている。