苫小牧市真砂町の出光興産北海道製油所(澤正彦所長)は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、今夏に予定していた大規模な定期補修工事、シャットダウンメンテナンス(SDM)について実施時期や規模の見直しの検討に着手した。全国各地から多数の作業員が集まるSDMに対し、市民から不安や延期を求める声が相次いでおり、市が4月30日に規模の縮小などを要請した。同製油所は「市民の命と健康を第一に結論を出したい」としている。
SDMは国が法律で定める保安検査。道内、東北、北陸に石油製品を安定供給するエネルギー拠点の責務として、同製油所は4年に1度、すべてのプラントを止めて点検や検査、補修工事などを行っている。当初計画では6月上旬~8月上旬、作業員はピーク時で1日5000人、延べ13万5000人の動員を想定していた。
一方、作業員は道外からも多く集まり、主な宿泊場所が市内のホテルとあって新型コロナの終息を見通せない中、市民から不安や延期を求める声が上がっている。市によると、4月30日までにSDM関連の問い合わせが24件あり、内容は「この時期に全国から多くの人が流入するのか」「延期してほしい」といったものが目立った。
こうした現状を踏まえ、市は4月30日に岩倉博文市長名の要請書を同製油所に提出。SDMが石油製品の安全・安定供給継続に必要なことに理解を示しつつ、主に▽最小限の点検・工事に限定すること▽作業現場や宿泊施設などで感染予防を徹底し、市民周知を図ること―の2点を求めた。
苫小牧民報社の取材に対し、同製油所は「要請を重く受け止めている。関係省庁などと相談、協議しながら、実施時期や規模の見直しなどを検討する」と強調。「どのぐらいの変更が可能かは現時点で決まっていないが、安全を大前提に取り組みを進める」と述べた。
SDMを当初の予定通り進めるには、5月中にも順次プラントを停止する必要があり、大型連休明けにも結論を出すとみられる。
1日、福原功副市長が市役所で記者会見。経済産業省はコロナ対策を踏まえ、保安検査期間を4カ月延長できるよう法改正したが、副市長は「SDMが遅くなると灯油などの燃料供給に支障を来す恐れがある。社会生活に与える影響を鑑みて、規模縮小と安全拡大の徹底を求めた。出光の対策で十分かどうか市としてもチェックしていく」と話した。