「このままでは店の経営や生活も立ち行かなくなる」。白老町内のスナック店主は、新型コロナウイルスの影響の大きさに悲痛の表情を浮かべた。緊急事態宣言に伴う道のスナック業界への休業要請で5月6日まで店を休むが、客足回復の見通しは全く立たない。店主は「深刻な事態はどの店も同じ。この苦しみの実態を行政は理解してほしい」と訴えた。
●暮らしていけない…
町内でスナックを長年営む女性店主は、休業に入った翌日の26日昼すぎ、店内で棚のウイスキーボトルやグラスを整理していた。新型コロナの影響を尋ねるため、記者が店を訪れると、作業の手を休めて「厳しいってもんじゃないですよ」と言った。
新型コロナ感染拡大による自粛ムードの高まりで2月から客足が遠のき、3月の売り上げはわずか7万円。4月に入ってからは一層ひどくなり、24日までに2万円しかなかった。生活費はもちろん、酒や食材の仕入れ、家賃、光熱費など維持費の月20万円も全く賄えない。
支払いを待ってもらい、社会福祉協議会を窓口にした無利子の緊急小口貸付資金20万円の手続きを取った。スナックなど遊興施設に対し、5月6日までを期間とした道の休業要請に応じれば、20万円の支援金も得られる。だが、いずれは返済しなければならない貸付金や、道の支援金も一時しのぎでしかない。
女性店主は「休業要請が解除されても、新型コロナが収束しない限り、客足は戻らない。蓄えもないため、暮らしていけなくなる。どうすればいいのか」と頭を抱えた。
●救いの手を
他のスナックも状況は同じだ。10年以上店を営む女性は沈痛な面持ちで記者の取材に「本当につらい。このままでは生きていけない」と話した。
道内で感染者が出始めた2月から客足が落ち、3月、4月は深刻化。来店客ゼロの日が続いた。「日銭を稼がなければ支払いや生活もできない。こうした商売に自粛の影響がいの一番に出る」と顔をしかめ、「身近な行政として町役場を頼りにしたいけれど、役場の人は誰も状況を聞きに来てくれない」と嘆いた。
別のスナック経営者も、経営難から小口融資の借り入れに走った。3、4月は極端に客が減り赤字経営。30年以上店を営んでいるが、こんな事態は初めてという。「夜の店の明かりが消えてしまえば、寂しい町になる。何とかしのぎながら店を続けたいけれど、どうなるものか。せめて家賃補助などの支援策があれば」と望んだ。
感染拡大に伴う外出自粛の影響は飲食店全体に及んでいるが、酒の提供を主とするスナックが特に強くダメージを受けている。町内に15店以上あるスナックのほとんどが道の要請で休業しているが、道内で感染者発生が止まらない中、緊急事態宣言や休業要請が長引くことへの不安も広がる。
町商工会(熊谷威二会長)は16日、新型コロナで厳しい経営を強いられている地元事業者への経済支援を町に要望。町は対策を検討し、30日の町議会定例会で補正予算案を出す方針だが、窮地のスナック救済につながるかどうか。町内でスナックを経営して32年になるという工藤光子さん(72)は言う。「私たちの業界も地域の事業者として頑張ってきた。行政に痛みを分かってもらい、救いの手を差し伸べてほしい」