あれから1年

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  • 2020年4月23日

  昨年の桜の季節。花曇りの日だった。初登庁した鈴木直道知事は職員たちに「前例にとらわれず、新しいアイデアを出してほしい」と呼び掛けた。あれから、きょうで丸1年を迎えた。

   当時38歳。全国最年少知事の誕生だった。ただ、ここまでの道は決して平坦ではなかった。埼玉県出身で普通の少年だった鈴木氏だが、高校時代に両親が離婚。母と姉との暮らしは窮迫する。一度だけ母に「生まれて来なかった方が、よかったのかな…」とつぶやいたこともあったそうだ。周囲が政治への道をいざない、財政再生団体の夕張市長を2期務め、道政のかじ取り役へ駆け上がった。

   知事就任1年目。大きな政治決断を迫られたのが、IR(カジノを含む統合型リゾート施設)。一度は誘致申請に傾いたものの、優先候補地・苫小牧市植苗地区の環境問題が表面化。与党の自民党・道民会議も賛否両論が渦巻き、意見集約を断念。知事自身も主体性を発揮できず、今回の申請は見送りに。ただ、直後にIR汚職事件が発覚。「まさに絶妙の読み」と側近をうならせた。

   1月から新型コロナウイルス対策に奔走する毎日。道独自の「緊急事態宣言」など、国より一歩先手を打つ手法が注目を集める。「やり過ぎだと笑われても、私が責任を取ればいい。そう考えて判断した」。きのうの会見で、こう語った。感染拡大防止を最大の命題に、若き知事の挑戦が続く。(広)

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