新年度が始まるこの時期は官庁や企業、学校などにとって大きな区切り。新たなスタートで希望や夢を膨らませたり、不安や緊張感を抱いたりする人も多いと思う。記者も入社式や入学式など、いろんな場面を取材しているが、今年はやはり新型コロナウイルスの影響を抜きには語れない。
自動車部品製造のアイシン北海道は、自動車業界全体が打撃を受ける中での入社式。これまで右肩上がりで成長し、年間売上高は100億円規模を誇る同社も例外なく、減産態勢を余儀なくされている。桂山直樹社長が新人11人にあいさつし、環境変化にスピード感を持って対応する姿勢などを訴えたが、その内容が印象に残った。
会社の概況やビジョン、業界の動きを説明した上、社長が語り出したのは自身が高齢で単身赴任している境遇。「不自由さと、気ままさがある」とユーモアを交えつつ、新型コロナ対策にも共通する困難に立ち向かう大切さを説き「悩み、苦しみ、楽しみ、自分を乗り越えて」と激励した。
参加者のマスク着用は当たり前。座席は1メートル以上は離れている。華やかな演出などはもちろんなく、ともすれば沈みがちになりかねない雰囲気を、社長のスピーチ一つでがらりと変えた。取材を通して感じたのは「コロナに負けない」という強い意志。自分たちが今できることをやる、ものづくり現場の底力を見た気がした。(金)