民族共生象徴空間(ウポポイ)の4月開業を控える地元白老町で、アイヌ文様を目にする機会がやたらと増えてきた。ウポポイ来場者に売り込むため、町内の事業所や団体が作る小物や装飾品、食べ物のパッケージなど、ありとあらゆる土産品にデザインされている。来町する観光客に”アイヌ文化のまち”を分かりやすくアピールする手だてとして最適な素材なのだろう。だが、誤解を覚悟で言えば、ビジネスに絡むにわか利用のようにも見えて、少々気になる。
幾何学的で美しい文様は、単なる図柄ではない。アイヌ民族が生活や信仰の中で育んだ文化遺産だ。川の流れや風の動き、植物のとげなど自然から生まれた線は親から子へと受け継がれ、男たちは儀式や暮らしの道具に刻み、女性らは愛する家族を思いながら布に針を通して描いた。地域によって形に違いもある。そうした営みを理解し、地域の独自性や伝統を重んじた上での使用でなければ、乱用と言われかねない。批判や無用なトラブルを招く恐れもある。
釧路市の阿寒温泉街では使用ルールを定めている。文様の描き方をはじめ、道路や床、椅子など踏みつけたり、座ったりする所に使わないといった決め事がある。白老町でもルール化を模索すべきだ。アイヌ関係団体や事業者の協議の場を設け、白老ならではの方法を考える。それが地域文化を守ることにもつながるはずだ。(下)