札幌でも、雪解けが一気に進んだ。冬が幼い春に少しずつ道を空け始めている。春はどこか別の世界へ行かなくてはならない出来事が、他の季節よりも少し多いのかもしれない。卒業式や転勤…。別れの季節でもある。
「また東京に戻ります」「今度は大阪です」「別の業界に移ります」。道庁にある道政記者クラブの各社も異動の季節になった。新型コロナウイルス感染が道内で拡大した2月下旬以降、連日連夜の記者会見や会議の取材に追われる記者たち。異動が決まった記者には、候補者選びが混迷を極めた昨春の知事選や、土壇場で揺れに揺れたIR(カジノを含む統合型リゾート施設)の取材現場を一緒に歩いた人も多く、少し寂しい。
一昨日の日曜日。札幌の中心部を歩いた。「緊急事態宣言」を鈴木直道知事が出し、外出自粛を要請した3度目の週末で、いつものにぎわいはない。新型コロナによる自粛の波が押し寄せ、劇団四季の専用劇場「北海道四季劇場」もこの日、予定していたファイナル公演の千秋楽が中止になった。
故浅利慶太さんが慶大在学中に立ち上げた劇団四季。道内では2011年に常設劇場を設け、計10作品、170万人以上を動員した。スタッフも心優しい人たちが多く、千秋楽をやれなかったことは残念に思う。「文化の東京一極集中の是正」を理念に掲げ、道都で約10年間活動した四季。そんな歴史に、静かに幕を下ろした。 (広)