記者が勤務する白老支局の近くに住む高齢のおじさんは最近、マスク姿での散歩を日課にしている。家に閉じこもってばかりでは、気が滅入ってしまうという。なるべく出歩くのを避けるようにしているが、「いつまで続くのか」とため息をついた。
ウイルス感染の拡大が止まらない。重症化の恐れがある高齢の人にとって、治療法が見つかっていない新型肺炎は恐怖そのものだ。独自に緊急事態宣言を出した道知事は、道民に今週末も外出自粛を要請。前週より緩和したといえど、かつてない異常な状況が不安をさらにかき立てる。
自粛ムードで家に引きこもる高齢者が多い中、一人暮らしが特に心配だ。マスクが手に入らなくて外に出られず、不自由していないだろうか。日々増える感染者数のニュースにおびえ、弱っていないだろうか。人と接触しないよう趣味の集まりも中止されているから、ストレスで気分が落ち込んでいるかもしれない。社会はウイルスの抑え込みに躍起だが、見過ごされがちな弱者に目を向け、支える手だても必要だろう。
政府は感染の急拡大に備えた法改正を目指している。成立すれば緊急事態宣言に基づき全国の知事が住民の外出自粛などを要請できるようになる。対処の必要性は理解できるが、私権を制限する裏側で苦しむ人は必ず出てくる。規制の範囲は必要最小限にし、ケアも忘れずにと求めたい。(下)