㊤ むかわ町在住・美容師 松井恵美子さん(84) 「90歳まで腕振るう」 半世紀続いた店舗 が半壊、秋から新天地で仕事したい

  • 特集, 胆振東部地震から1年半 今を生きる
  • 2020年3月5日
90歳まで続けるつもりだった美容師の仕事を帯広でも生かしたいと商売道具のハサミを前に意気込む松井さん
90歳まで続けるつもりだった美容師の仕事を帯広でも生かしたいと商売道具のハサミを前に意気込む松井さん
胆振東部地震で被災し、解体された「まつい美容室」=2018年11月、むかわ町美幸
胆振東部地震で被災し、解体された「まつい美容室」=2018年11月、むかわ町美幸

 むかわ町福住のみなし仮設住宅で暮らす美容師、松井恵美子さん(84)は、同町美幸で半世紀以上続けてきた自宅兼店舗の「まつい美容室」を胆振東部地震で失った。一時は仮設店舗での営業も考えたが断念。最愛の夫とも昨年死別するなど苦難を重ねたが、「90歳までは腕を振るいたい」と美容師の仕事に思いを傾ける。今年秋には長女の老松由加里さん(46)一家が暮らす帯広市に移住し、散髪ボランティアとして活躍する日を夢見ている。

 「あの出来事がなかったら命はなかった」。松井さんは震災当日をそう振り返る。自宅兼店舗の2階で寝ていた松井さんは地震前日の2018年9月5日、寝室を2階から1階に変えたばかりだった。急傾斜の階段を上り下りする様子を案じた親戚のアドバイスでベッドを移動し、眠りに就いた翌日の未明、大きな揺れに襲われた。

 建物は2階を中心に半壊し、住めなくなった。当初は同町松風の仮設店舗での営業も考えたが、仮設住宅との往復や夫の求(もとむ)さんの介護など負担が重く断念。地震の後、「命があっただけ良かった」と慰め合った求さんの体調は徐々に悪化し、昨年6月に87歳で亡くなった。涙はまだ乾かないが、美容師としての半世紀の積み重ねが松井さんの毎日を支える。「仕事をしたいのに営業できないのは悔しい。でも過去を振り返っても仕方がない」

 開業時から北海道美容業生活衛生同業組合苫小牧支部の会員。現在も「廃業」ではなく「休業」扱いだ。松井さんの人柄と腕を惜しみ、散髪を依頼する電話が入る。店がなくなったと伝えても、常連客に「どうしても」と請われ、仮設住宅の駐車場で散髪に応じたこともある。「『お金を払う』と言われたけど受け取れなかった。きちんとした設備の中で白衣を着ないと、プロとしての意識が許さない。必要としてくれている気持ちだけで十分うれしかった」

 一人暮らしを心配する子どもたちから年明けに「一緒に暮らそう」と誘われ、長女が暮らす帯広に行くことを決めた。秋には新しい地での生活が始まる。どこで暮らそうと変わらない願いは、技術が生かせる美容師として仕事をすること。帯広では由加里さんと一緒に介護資格を取得し、福祉施設で散髪ボランティアをするのが目標だ。

 「知らない土地だけど心配はしていない。90歳まで健康を保ち、仕事を続けるのが私の生きがい。堂々と、これからの人生を歩んでいきたい」と笑顔を見せた。

 (半澤孝平)

 ◇

 胆振東部地震からあすで1年半。むかわ、安平、厚真の3町で被災し、大切なものを失いながらも一歩一歩前へ踏み出す人たちの今を追った。(全3回)

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