問われる

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2020年3月4日

  買いだめの報道を読むとつい不安になる。「心配ありません」という真意は正確に伝わるのだろうか。報道が混乱をさらにあおっているのではないか。

   新型コロナウイルスの感染拡大でマスクが極端な品薄になって何週間になるだろう。感染対策の先進地・北海道では国がマスクを配布するそうだ。わが家には以前にインフルエンザ対策で買ったものがあって、行列に並ばずに済んでいる。消毒用のアルコールは近所からお裾分けがあった。手洗いを励行すれば過度に神経質にならない方がよいと考えることにして、探し回るのはやめていた。驚いたのはトイレットペーパーの品切れ騒動だ。1973年11月の石油ショックの大騒乱を思い出した。

   マスクの増産で原料が不足―というネット上の情報が発端だという。「事実ではない」と業界が否定し、それが報道されても収まらない。「偽情報によって街から品物が消えた。冷静に」とテレビが呼び掛けていた。それでも「消えた」の部分だけを聞いて、念のために余分に買い足して棚の隙間を広げる人が多いようだ。テレビにはカラオケや街遊びの高校生が写っていた。もしや自警団の見回りでも―と恐ろしい空想をした。

   どんな情報や言葉を選んで、伝え、話すか。その内容や、含まれている冷静さによって情報の発信者が問われている。問われ、試されているのは政治と政治家だけではない。慎重になりたい。(水)

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