大丈夫?

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2020年2月29日

  何となく聴いたラジオ番組の、その日のテーマは「駅」。話の合間には駅が題材になった新旧の音楽が流れ、その詩や旋律に、何度も胸が熱くなった。

   駅は、重くつらい舞台になることがある。特に春。時間がくればドアが容赦なく閉まり、汽車がガタンと動きだし、行く人と送る人の別々の時間が始まる。空港や港も同じなのだが、駅の情景が記憶から消えないのは年齢のせい。

   番組の中で、中島みゆきさんの「ホームにて」を聴いた。「ふるさとへ向かう最終に 乗れる人は急ぎなさいと やさしいやさしい声の駅長が―」と始まる、1977年の曲だ。客車の色は空色。明かりのともった車内には「帰りびと」たちの笑顔が見え、乗れなかった者の心が「振り向けば ドアは閉まる」と寂しく歌われる。

   自分の、ふるさとにつながっていた鉄路は86年11月1日、廃線になった。もう33年が過ぎた。木造の駅舎は取り壊され、記憶の中にしか残っていない。レールは引きはがされて、跡をたどるのも難しい。新しく整備の進む新幹線や駅は大都市や観光地を結ぶもの。

   きょうで2月は終わり。片道の切符を握った若者がふるさとを離れる3月が始まる。「北海道、大丈夫?」。新型肺炎の感染者数が47都道府県で1位だと知った東京の知人からの電話。高齢化や若者の流出、ローカル線の廃止―。思えば暗い話題の何と多いこと。きょう、あすは外出自粛も。(水)

過去30日間の紙面が閲覧可能です。