人口減対策 子育て世代の負担減へ 給食費、教育ローンなど助成

  • 未来を見詰める 苫小牧市2020年度予算案, 特集
  • 2020年2月22日
セミナーで教育資金ローンの助成制度をPRする市職員=2019年11月、苫小牧市役所

  苫小牧市の2020年度市政方針で、岩倉博文市長が市政最大の課題と位置付ける人口減少対策。同市の人口は13年末の17万4469人をピークに右肩下がりに転じ、19年末時点で18年末比569人減の17万1242人となっている。6年連続で前年を下回っており、歯止めがかかる気配は感じられない。

   市は人口減を背景に市税収入が17年度決算に比べ、27年度までに20億円以上落ち込むと試算。ここ数年は共働き、高齢就労者の増加などで市税収入は大きく減っていないが、「もうそろそろ厳しくなるのでは」(市幹部)との見方は根強い。

   そうした中、市は20年度、人口減少対策を軸とした総合戦略の第2弾に乗り出す。戦略案には先端技術の活用や移住促進策、子育て支援、産業振興、地域ブランドの向上などに目を配った施策が並ぶ。早速、20年度予算案に盛り込んだ関連事業も多い。

   20年度から本格スタートするUIJターン新規就業支援事業は、東京圏の就労者が市内に移住、就職することなどを条件に移住支援金100万円を支給する試みだ。

   カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致を見据えた国際リゾート構想推進事業には、1500万円を盛った。植苗地区のリゾートエリアからの交流人口拡大のため、国際交流拠点として市街地エリアの都市再生を模索する。

   市の庁内業務のRPA(ロボットによる業務自動化)の実証実験費も200万円計上。限られた人材での、業務の一層の効率化を視野に入れる。

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   子育て世帯の経済的な負担軽減にも取り組む。20年度から、市内の小中学校に在籍する子ども3人以上の世帯対象に、3人目以降の学校給食費の全額助成に踏み切る方針。すでに取り組んでいる不妊症や不育症の治療への助成事業に加え、新たに不妊原因の早期発見につなぐ不妊検査費を夫婦1組につき2万円を上限に助成する「コウノトリ検査」事業も始める。

   19年度に始めた大学生向け教育資金ローン助成制度のアピールも強化する。大学卒業後の市内就職と居住を条件に大学進学した子を持つ市内の保護者に対してローン利息分などを補助する仕組み。うまく使えば、ローン元金の半額相当分で最大72万円が市から支給される。

   市がこうした財政支援に踏み切る背景には20~39歳の市民を対象に昨年10月に実施した「結婚、出産、子育て等に関する意識調査」で、「子どもの数が理想に比べて少ない理由」について、約6割が「お金が掛かり過ぎる」と回答したことも大きいとみられる。

   自然動態(出生数と死亡数の差)を見ると、11年末から連続9年の自然減となっている。年間の出生、死亡数は11年末時点では共に1500人台だったが、その差は年々拡大。19年末には出生数が18年末比97人減の1146人まで落ち込んだ一方、死亡者数は68人増の1927人で、781人の自然減となった。

   12日の記者会見で、岩倉博文市長は人口減少対策を問われ、「子育て世代や結婚適齢期の世代が望む施策を時差なくやるのがポイント。優先度を上げて取り組みたい」と力を込めた。

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