力に

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  • 2020年2月22日

  先日、感謝状というものが郵便で届いた。思えば表彰状も含めてこの種のものには、ほとんど縁のない生き方をしている。少しくすぐったい気がした。

   地震や津波、台風や洪水―。災害が続く。被災者や被災地の力になりたいと思う。しかし、何一つ具体的な力になれないもどかしさが心にたまる。災害大国は精神衛生上も、良くない。若い同僚が数年前、取材の帰路に洪水の被災地を訪れ、ボランティアとして住宅の片付けを手伝ってきた。その話を聞いて、うらやましかった。誰かの力になる基礎条件である健康と力が自分にはないのだ。義援金への協力はできてもそれは一時的なもの。風化という言葉が聞こえるとすぐ罪悪感にとらわれる。

   感謝状は特定非営利活動法人国連UNHCR(難民高等弁務官事務所)協会からのもの。数年前、出掛けた書店の店頭で、数人の若者がポスターを掲げてアフリカや中近東の難民救済への協力を呼び掛けていた。毎月、負担にならない程度の金額を口座から引き落とす方式。例示されていた額が、自分の小遣いで工面できる額だったこともあり思い切って署名した。以来、毎年、活動報告が届く。

   感謝状といってもA4変形判の薄い上質紙一枚。「難民を守り、その人生を再建し、人々の未来への希望をつくる大きな力です」。少額の支援への、大きな評価を何度も読み返した。自分にもできる支援を続ける、重い支え。(水)

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