今夜は一緒に、いただきます 山田(やまだ) 麻以(まい)

  • ゆのみ, 特集
  • 2024年11月7日

  苫小牧市豊川町でワーカーズコープ・センター事業団が運営する「みんなのおうち」というコミュニティースペースでは、毎週木曜に「みんなのおうちごはん」というものを開催している。私も時々お邪魔し、ほかほか手作りのご飯を、「初めまして」という人や、顔見知りの人がいる空間でいただく。

   食べ終わった後は、話を聞いたり、聞いてもらったりしながら、ほっとできる時間を過ごす。日常に追われていると、「ご飯を丁寧に食べること」を、つい後回しにしてしまうことがある。おなかが満たされれば良い、栄養を取れれば良いという単純な思考になり、慌ただしく食事を済ませてしまう日も少なくない。

   けれど、元気がない時こそ、誰かと食事を共にしたり、心の底からおいしいものを五感で味わったりすることで、体にも心にも力が湧き上がってくる。食べることは生きることであって、共に食べるという行為は、共に生きている人がいると感じることができる素晴らしいものだ。

   さらに、料理の背景にある作り手の思いが、私の中に染み渡り、疲れた心を優しく包み込んでくれる。食事の時間を楽しむことは、ただ空腹を満たす以上の意味を持ち、心を豊かにする瞬間を提供してくれる。食事の前後に手を合わせる。それは、食べられることや、生かされていることへのありがたさ、近く、遠くのおかげさまへの感謝にも通じると思う。

   今夜は、手を合わせ、声に出し、ぜひご一緒に。「いただきます」「ごちそうさまです」。

  (納棺師・苫小牧)

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