アイヌ文化復興拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)の4月オープンを前に、地元白老町で観光客向け商品を開発する動きが広がり始めた。福祉施設がアイヌ文様を取り入れたオリジナルデザインのTシャツ販売を計画したり、地元アイヌ協会は食品製造業者と連携しアイヌ文化をイメージした菓子を生み出したりと、ウポポイ開業で国内外から白老に訪れる人たちへ売り込む土産品の準備を急いでいる。
■福祉施設が開発に意欲
障害者支援施設の社会福祉法人白老宏友会・愛泉園=同町竹浦=は昨年秋に400万円を投じ、布地にデザインを印刷できる機械や刺しゅう用ミシン、アイロン機器を導入。年間100万人を目標に掲げたウポポイの来館者に販売するTシャツやトートバッグなどを生産するためで、試作などに取り掛かっている。
商品には、アイヌ文様と北海道に生息する動物を組み合わせたオリジナルデザインのプリントや刺しゅうを施し、同法人がテナント事業者としてウポポイ内に設ける「スイーツ・カフェななかまど」で販売する計画。愛泉園が従来から製造販売しているアイヌ文様デザインの缶バッジもリニューアルして売る予定だ。
商品は2月から愛泉園で本格生産に乗り出し、障害のある施設利用者が作業に携わる。同施設で商品作りの指導に当たる支援主幹の丸山貴俊さん(49)は「売り上げは施設利用者の作業工賃に反映される。工賃が上がれば利用者の励みになるし、商品開発が白老の観光支援にもつながれば」と言い、準備に熱を入れる。
同法人の多機能型事業所ポプリ(有城雅章施設長)=同町東町=も、「スイーツ・カフェななかまど」で扱うカップチーズケーキやパイなど、アイヌ文様デザインの容器に入れたテークアウト用商品の開発に取り組んでいる。
■商品でアイヌ文化発信
同町石山の「輪果窯」(鳴海修江代表)は、アイヌ文様デザインを取り入れた皿やカップ類、小物入れなどの陶器を制作し、道内の温泉ホテルや新千歳空港の売店に納めている。北海道をイメージする品として観光客から評判を呼んでおり、ウポポイの施設内に開設されるテナントへ商品を納入することも決まった。修学旅行生などが土産として買い求めやすいよう安価な小皿などを新たに作る考えで、制作に当たる鳴海代表(57)と田中あやさん(54)は「アイヌ文化の発信に一役買いたい」と意気込む。
一般社団法人白老アイヌ協会(山丸和幸理事長)も、ウポポイが誕生する白老を盛り上げようと、先進地視察を行いながら土産品の開発を進めてきた。商品は、アイヌ民族が神とあがめるシマフクロウをかたどった「コタンカムイ サブレ」、チョコレートをクッキーではさんだ「ニヌム サンドチョコ」、焼き菓子の「ポロトラスク」の3種を予定。苫小牧で菓子・パンを製造販売する四季舎と連携して商品を作り、「カムイ伝説」をキャッチフレーズにした商品のデザインパッケージを今月中に決める。
商品は白老観光協会が管理運営する白老駅北観光商業ゾーン・観光インフォメーションセンターや、ウポポイ内の売店で売りたい考え。山丸理事長は「ウポポイ開業後もサケの薫製など商品開発を進める。観光客にアイヌ文化をアピールしたい」と言う。
■商店街も商品作り
大町商店街を中心とした店舗で組織する白老商業振興会(久保田修一理事長)は、ウポポイを商店街の活性化につなげようと、土産品の開発を急いでいる。
チョコレートやTシャツ、マグカップ、タオルなど、アイヌ文化のイメージデザインを施した商品を作り、各店で扱う予定。観光客に商店街をPRし、足を運んでもらうのが狙いだ。
久保田理事長は「エコロジーというアイヌ文化を取り入れた商店街づくりができないか。そうしたことも考えたい」としている。