(8)「安全第一」今夏にSDM  出光興産北海道製油所澤正彦所長

  • 挑む経済人 2020企業トップに聞く, 特集
  • 2020年1月15日

  日本において原油の輸入先は中東が88%を占める。2019年6月に原油輸送の大動脈であるペルシャ湾ホルムズ海峡の近海で、日本の海運会社が運航するタンカーが攻撃されたり、同9月にサウジアラビアの石油関連施設が襲撃されたりするたびに、原油価格は高騰した。今年に入って産油国のイランと米国の対立関係が激化している。動向を注視するとともに、原油の輸入先の多様化を図る必要性を改めて感じている。

   一方で、国内の石油製品の需要は減っている。1年間でガソリンや灯油は2%、漁船やビニールハウスの燃料に使われるA重油は3%、工場用のC重油は4%それぞれ減少した。それだけに石油会社は生き残りを懸けて競争力を磨かなければならない。

   昨年4月、出光興産は昭和シェル石油と経営統合し、出光昭和シェルとして新たな船出をした。従業員数1万3000人、売上6・9兆円、5製油所・2事業所体制で1日当たり94・5万バレルの原油処理能力を持つ。石油製品の販売シェアはJXグループに次ぐ業界2位となり、さらなる発展に尽力していく。北海道製油所は道内唯一の製油所として道内をはじめ、東北、北陸にガソリンや灯油などの製品を広く供給しているが、需要に追い付いていない。可能な限り需要に応えられるよう努めていきたい。

   われわれに求められる課題は「安全第一」に尽きる。そのために設備の更新が欠かせない。今年夏は全ての設備を一斉停止する4年に1度の大規模SDM(定期補修工事)を行う。安全性を高めながら生産性を向上させて国際マーケットで勝てる競争力の強化を図っていく。4年前の16年は作業員が過去最大規模の延べ9万人だったが、今回はそれを大幅に上回る延べ13万人を見込む。苫小牧を中心に周辺の宿泊施設や飲食店、コンビニエンスストア、タクシーなどの業界の経済効果も期待されるだろう。

   地元企業として地域貢献にも大いに取り組んでいる。16年に苫小牧市の施設命名権(ネーミングライツ)で名付けた末広町の「出光カルチャーパーク」(市民文化公園)は、おかげさまで定着した。製油所敷地内で満開になるヤエザクラの一般公開や市民コンサートなども開催。長年取り組んできた構内の緑地整備が評価され、公益財団法人都市緑化機構の認定制度「社会・環境貢献緑地評価システム」で最高位を昨年取得した。苫小牧市民に愛される製油所でありたいと常々思っている。従業員の健康増進や働き方改革にも着手しており、活気ある製油所として盛り上げたい。

   1973年創業。関連会社や協力会社を含め、従業員数約800人。原油処理能力1日2万3850キロ。敷地面積212万平方メートル。所在地は苫小牧市真砂町25の1。

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