評価

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  • 2020年1月11日

  ダケカンバを間近で見たのは40年ほど前、日高山脈のペテカリ岳(1736メートル)の西尾根。残雪時期の登山会に裏方として参加、雪の上に大の字に倒れた当方を笑って見下ろしていた。

   後志管内の羊蹄山や大雪山系の黒岳でも登山道近くに立派な木が生きている。オロフレ岳を目指す峠の駐車場付近では車内からでも独特の雰囲気の林が見られる。

   標高千メートル前後の亜高山帯に生きるダケカンバは、強風や雪の重みで幹や枝がぐにゃぐにゃと曲がりこぶだらけ。まっすぐ伸びた針葉樹に比べ板にも柱にもしにくい樹種と評価され、道内の森林資源の1割ほどを占めるのに、多くは細かく削られて製紙原料になるそうだ。それが、強度に着目した道立総合研究機構林産試験場の研究者によって、硬式野球のバットに加工されたと報道されていた。北海道日本ハムの田中賢介選手が、現役最後の半年間、このバットを使い5本の安打を放ったそうだ。

   「意思疎通のできない人は殺した方がいい」「施設入所者は不幸を生み出すのでいらない」。障害を持って生きる人たちをそんなふうに評価する青年が2016年7月、神奈川県相模原市の知的障害者施設を襲い、入所者19人を殺して、職員を含む26人にけがを負わせた。事件の公判が横浜地裁で始まった。幸と不幸、有用と無用、差別、同情―。国民一人ひとりの心と意識のありようを問う裁判だと思う。冷静に見守りたい。(水)

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