(10)ポロト湖で整備進むウポポイ 成功の鍵は地元全体の姿勢、開業への期待感に温度差

  • この1年2019, 特集
  • 2019年12月26日
白老町のポロト湖畔で来年4月に誕生するウポポイ。今月、報道陣に公開された

 来年4月の開業まで130日を切った今月19日、国が白老町で整備している民族共生象徴空間(ウポポイ)で報道機関対象の現地説明会が開かれた。ポロト湖のほとりにアイヌ民族の歴史や文化を紹介する近代的な施設が立ち並び、2017年にスタートした工事は大詰めを迎えていた。湖畔でひときわ目立つ国立アイヌ民族博物館や、古式舞踊を上演する体験交流ホールの内部に初めて足を踏み入れた報道陣。豪華な仕上がりに目を丸くする新聞やテレビの記者を前に、アイヌ民族文化財団・民族共生象徴空間運営本部の村木美幸副本部長は「体験プログラム提供や文化伝承活動など、ここでの夢は膨らむばかり」と施設運営へ並々ならぬ意気込みを口にした。

 アイヌ文化復興拠点のウポポイは、アイヌ民族を先住民族と認めた08年の国会決議を受けて整備構想が浮上。10年に白老町が候補地に選定され、人口1万6000人ほどの小さなまちで200億円を投じる国家プロジェクトに地元も沸いた。工事の本格化で今年、湖畔に次々に姿を現した施設群。同時並行的に道や白老町などは年間100万人を目標に掲げた来館者の受け入れに向け、JR室蘭線をまたぐ自由通路や駅北の観光インフォメーションセンターの建設、駅前広場、アクセス道路の整備に急ぎ、まちにつち音が響く一年となった。

 だが、アイヌ民族をテーマにした国内初の国立施設が形になるにつれ、地元では地域活性化への期待と動きに温度差が広がった。今年に入って一部事業所が土産品開発に挑んだり、個人が飲食店を始めたりしたものの、開業をビジネスチャンスと捉えた動きはいまだ弱い。町がウポポイに連動した地域振興策として設けた駅北観光商業ゾーンへの参入業者は決まらないまま。好機を生かした創業や商売を後押しするために今秋、商工会が開いたセミナーの参加者もわずか2人だけだった。

 「娯楽施設とは異なるウポポイの性格上、年間100万人という数字を懐疑的に見てビジネス参入をためらう事業者は多い」と関係者は言った。人口減でまちの将来を案じる町役場にとって希望のウポポイに、ある企業経営者も「投資を回収できるか、それが未知数の中で冒険できない」と冷ややかなまなざしを送った。

 戸田安彦町長は11月議会での3期目所信表明で「観光の起爆剤に位置付け、白老の魅力を発信したい」と力を込めたが、肝心の経済界が一枚岩になれない状況が続く。

 ウポポイを複雑な思いで見詰める地元アイヌの人たちもいる。白老アイヌ協会の山丸和幸理事長は「若者が伝統文化を身に付け、伝承する場ができるのは喜ばしい」としながらも、「言葉や儀式の作法など地域で異なる多様な文化を守ることも必要。国は象徴空間だけでなく各地の伝承活動を支援すべきだ」と注文を付けた。ウポポイが国内外向けに標準化したアイヌ文化を伝えるならば、地域で育まれた伝統文化が陰に追いやられる。そんな懸念から同協会は6月末、白老独自の文化を伝えるカフェを町内に開設した。

 国の先住民族政策や共生社会の象徴となる施設のオープンまであと4カ月。町民の間で歓迎ムードはいまひとつ盛り上がらず、意見もさまざまあるのは確かだが、国家プロジェクトの成功は地元全体の姿勢に懸かっていることに変わりはない。

 (おわり)

 (白老支局 下川原毅)

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