元号が令和となった5月1日、10年以上勤務した苫小牧本社を離れ、厚真町に拠点を置く支局に異動になった。厚真、安平、むかわの3町を駆け回るようになっておよそ8カ月、新たな出会いもあり、ここにいなければ味わえなかった喜びや感動があった。地域ならではの温かみを感じた1年だった。
3町と言えば、忘れてはならないのが昨年9月6日に発生した胆振東部地震だ。厚真町では道内初となる震度7を観測し、災害関連死を含め37人が犠牲に。安平、むかわ町でも震度6強を記録し、多くの建物が倒壊した。自宅を失い、仮設住宅に入居している人たちは、11月末時点で650人以上。土砂崩れを起こした山はもちろんだが、いまだ手付かずの壊れた家屋や倒木など、いたるところに震災の爪痕が残る。当事者にしか分からないトラウマや家族、友人を亡くした苦しみや悲しみに触れるたび、心が揺さぶられた。
壊れた建物や道路は時間をかけて直せても、強烈な揺れに襲われた記憶は簡単には消えないし、失った家族、仲間なども帰ってこない。それでも心の中でそれらを整理しながら、一人ひとりが立ち上がり、日々を過ごしている。子どもたちの持つパワーにはいつも無限の可能性を感じた。安平町では町を元気にしようと、当時の小学生たちが「8000人の笑顔プロジェクト」と銘打ち、3万4000人を超える人たちの笑顔を集めて展示。厚真町とむかわ町では全国各地で自然災害が相次ぐ中、「今度は自分たちが」と率先して義援金を集めたり、折り鶴、応援メッセージを被害を受けた県や学校に届けた。単純に「すごいな」と頭が下がる思いだ。
3町に住む一人ひとりが思い描く復興は5年、10年…、ひょっとしたらそれ以上におよぶ。ただ、それらを乗り越える底力は決して失われていない。復興の手助けになれるよう住民に寄り添って、新たな1年を迎えたい。
(石川鉄也)