(8)緑跨線橋が2年ぶりに通行再開 地域住民や商業者が歓迎、来年の中央IC開通で港とアクセス強化

  • この1年2019, 特集
  • 2019年12月24日
念願だった跨線橋が開通。利便性や安全性が大幅に向上した

  2年間にわたって架け替え工事を進めてきた苫小牧市中心部の国道276号緑跨(こ)線橋が、11月30日午前6時に開通した。「開通を心待ちにしていた。工事関係者の皆さんに感謝したい」。通行再開の様子を見ようと、夜明け前から現場でその時を待っていた緑町の男性は、氷点下の寒さの中で白い息を吐きながら笑顔で話した。

   跨線橋の架け替えは長年の課題だった。工事前の橋は片側1車線で、道路の幅員も狭く交通渋滞が慢性化していた。1965年の建設で耐震性にも課題があり、苫小牧市は2004年から拡幅工事を国に繰り返し要望。ようやく17年12月4日から全面通行止めにして本格工事が始まった。

   ただ、JR室蘭線を南北にまたぐ緑跨線橋は1日約2万2000台の車両が通行していた中心部の主要幹線道路。通行止め初日は国道36号中野跨線橋や市道旭大通アンダーパスの迂回(うかい)路が通勤車両やバスなどで渋滞し、市民からは不満も数多く出た。跨線橋に近い緑町・音羽町地区と若草町・新中野町地区の住民も外出時は遠回りせざるを得ず、「消防車や救急車の到着が遅れるのではないか」といった不安の声も上がっていた。

   工事期間中は地元商業者にも営業面への影響があった。車の流れが変わったことで客足が減少。跨線橋付近の飲食店や小売店は死活問題となったが、経営努力で2年を乗り切った。

   ローソン苫小牧双葉町3丁目店は「客足、売り上げ共に3割減った」(石川秀治オーナー)といい、商品の仕入れを見直して食品ロスを減らすなど自助努力を重ねて利益を確保してきた。弁当販売の甚べい双葉店は当初1年の売り上げが1割減。「宅配サービスに力を入れるなどして減収をカバーしてきた」(谷内広秋店長)といい、通行再開後の売り上げ回復を期待する。

   念願の新しい跨線橋は、延長700メートル。道路幅は5・5メートルから6・5メートルに拡幅するとともに、全区間に幅2・25メートルから3メートルの歩道を設置した。さらに車の停止線から40メートル区間の傾斜を以前より緩やかにし、衝突事故や冬期間のスリップ事故防止を図っている。跨線橋に並行する副道は対面通行から一方通行に変更。総事業費約50億円をかけた一大プロジェクトは一部で最終工事を進めており、来年2月末に完成する予定だ。

   また、道央自動車道「苫小牧中央インターチェンジ」(IC、仮称)も来年開通予定で、跨線橋の架け替えによる相乗効果で利便性はさらに高まる見込みだ。特に物流拠点として注目される苫小牧では、海上物流で内貿貨物取扱量全国1位を誇る港へのアクセス向上にもつながり、機能強化が期待できる。

   跨線橋の開通を記念したお披露目会で岩倉博文市長は「(中央ICが完成すれば)人や物の流れはスムーズになる。地域活性化につながるよう努力したい」と語った。

   苫小牧市は全国同様に少子高齢化と人口減少が進む。税収を維持し公共サービスの低下を防ぐためには、経済成長が欠かせない。苫小牧港という大きな財産を生かす上で、苫小牧中央IC―緑跨線橋という主幹ルートの構築は関係者の大きな願いだった。その完成まではもうすぐ。さらなる発展を目指す取り組みがこれから始まる。

  (報道部 伊藤真史)

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