政府は20日に閣議決定した2020年度予算案に、白老町で来年4月開業の民族共生象徴空間(ウポポイ)の管理運営費などアイヌ政策関連で56億900万円を計上した。19年度で完了するウポポイ施設整備を除いた今年度当初予算比では5割増。中でも、5月施行のアイヌ施策推進法で創設された「アイヌ政策推進交付金」は2倍の約20億円を計上し、アイヌ文化を生かした地域の取り組みを後押しする。
政府のアイヌ政策関連予算案は、国土交通省、文部科学省、内閣府など各省の20年度予算案に盛った関連事業の総額。公益財団法人アイヌ民族文化財団(本部札幌)が担うウポポイ関連では、国立アイヌ民族博物館や国立民族共生公園、慰霊施設の管理運営費として28億8400万円。慰霊施設関連では、アイヌ民族の遺骨返還に向けた手続きの支援や調査費など800万円を盛った。
アイヌ政策交付金は20億300万円を計上し、今年度予算比で倍増となった。同交付金は、アイヌ施策推進地域計画を策定した市町村の申請に基づき、アイヌ文化を生かした地域振興策に費用を支給する制度。白老町では今年度、1次、2次を合わせて約7500万円を申請し、アイヌ文様ラッピングバスの運行やウポポイ開業に伴う救急医療体制強化などの事業に交付金を活用し、20年度も引き続き事業費確保へ申請手続きを取る方針だ。
アイヌの人たちの生活向上を図る事業も展開し、予算として3億6500万円を計上。就学支援(高校生や大学生などへの奨学金補助)に7300万円、雇用と生活の安定(就職相談や生活館運営補助)に9800万円、中小企業の産業振興(アイヌ民工芸品の展示会や研修会の開催費補助)に700万円、生活安定(生活相談事業)に600万円といった予算を盛り込んだ。
この他、アイヌ文化の振興・普及啓発の事業費として、アイヌ民族文化財団への補助金など3億1000万円、消滅危機にあるアイヌ語の記録保存事業で2000万円を計上。国のアイヌ政策推進会議の開催費などで1700万円、アイヌの人たちへの偏見や差別を無くし、国民理解を促すインターネット広告費400万円なども盛った。