(5) 新元号、平成から令和の時代へ

  • 特集, 胆振東部地震 未来を見据え
  • 2019年12月20日
平和、復興の願いなどを乗せて、祝賀ムードに包まれながら新時代を迎えた「令和」
平和、復興の願いなどを乗せて、祝賀ムードに包まれながら新時代を迎えた「令和」

  

  今年は約30年間続いた「平成」が終わり、新たな「令和」の時代が幕開けした。西暦645年に付けられた最初の元号「大化」以来248番目。昭和から平成への改元では、天皇崩御による深い悲しみに包まれたが、今回は対照的にお祝いムードから始まった。

   元号の字句はこれまで中国古典「四書五経」が引用の典拠とされてきたが、令和は初めて日本の古典である「万葉集」から引用。大きな注目を浴び、全国各地の書店では一時的に同著が品薄に。苫小牧市立図書館で特集展示を行ったほか、市内の万葉集研究サークル「さわらび会」がこの2文字を引用した序文を読み解く例会を開くなど、話題になった。

   新元号に切り替わる1カ月前の4月1日。テレビ画面に映る菅義偉官房長官はやや緊張した様子で記者会見場に姿を現し、両手で額を持ち上げて「令和」を国民に発表した。苫小牧市役所では、この瞬間を待っていた来庁者らが本庁舎ロビーの大型モニター前で歓声や拍手を上げ、家電量販店では展示された何十台ものテレビの生中継にくぎ付けになる買い物客らの姿があった。

   令和の響きに、平和の思いを重ねた高齢者や新しさを感じる若者など、市民の反応は好評なものが多かった。

   昨年9月に発生した胆振東部地震からの復旧、復興元年を掲げていた東胆振3町の町長もそろって歓迎した。

   厚真町の宮坂尚市朗町長は「励みになる。町民の心を一つにして先人が築いた伝統、文化を輝かせたい」とし、安平町の及川秀一郎町長は「新たなスタートにふさわしい元号。これまで以上に復興に汗を流したい」と期待を寄せた。むかわ町の竹中喜之町長も「被災者の不安が希望に変わり、未来へつないでいく時代にしたい」と今後への思いを語っている。

   平成最後の4月30日と令和初日の5月1日。その節目をまたぐように世間は10連休に入った。時代が変わる瞬間を売り上げ増の起爆剤にしようと、苫小牧市内の商業関係者もムードを盛り上げた。

   市内のはんこ店では元号訂正印や令和のゴム印が売れ、飲食店は平成最後の手作りケーキを販売。改元日に苫小牧―大洗航路のフェリーから初日の出を楽しむツアーは予約で埋まるほどの人気を集めた。

   異例の長期休暇に備え、国や自治体は企業などと連携して対応に当たった。各都道府県は連休中に受診できる医療機関を事前公表し、治療に必要な医薬品や医療機器が不足しないよう前もって医療機関に確保を呼び掛けた。金融機関には現金自動預払機(ATM)内の現金不足がないよう手当を要請した。

   令和初日を記念に残そうという動きもあった。苫小牧郵便局では、平成最終日と令和初日の郵便消印を求めて4月30日深夜から5月1日にかけて市内外から集まった人たちで混雑。市役所では夜間休日窓口に「令和婚」の届け出が急増した。通常は1日当たり3件ほどだが、この時は74件に上ったという。

   この1年は多くの人たちにとって復興や平和の願いを新たにし、輝かしい未来への一歩を踏み出す希望の年になった。間もなく迎える2年目の令和もそんな思いが続く年であるよう願っている。

  (報道部 半澤孝平)

  平和、復興の願いなどを乗せて、祝賀ムードに包まれながら新時代を迎えた「令和」

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