苫小牧市内の保育園に作品を贈り続けるボランティアサークル「キルト・ポエムとまこまい」の代表を務める苫小牧市春日町の三澤洋子さん(79)。ぬくもりのある手作りのおもちゃを子どもたちに届けたい―と制作したキルト作品を年に一度、市内の保育園に寄贈している。「子どもたちが喜ぶ姿を見ると、また頑張って制作しようという気持ちになる」と一針一針に思いを込める。
若いころから洋裁が好きで、端切れを使ってクリスマスツリーなどを作り、友人に贈っていた。1994年、新聞記事でエイズ(後天性免疫不全症候群)ウイルスに感染した世界中の子どもたちに、おくるみなどを贈る市民団体「ABCキルト苫小牧」が旗揚げされることを知った三澤さんは、同団体へ入会しキルト制作を学んだ。
団体は2001年に解散したが、「身近にもキルトの温かみを求める子どもがいるのでは」と思い立ち、団体で知り合ったメンバーに声を掛け、福祉施設などにキルトを贈るボランティアサークル「キルト・ポエムとまこまい」を02年に設立した。「古い布を大事にし、つなぎ合わせて一つの作品ができることに感動した」とキルトの魅力を語る。
サークルは03年に始動し、3年間は小樽市の道立中央乳児院を訪問して、敷物などを贈った。その後は寄贈先を苫小牧市内へ移し、06年にたいせい保育園、翌年にはあさひ児童センター、いとい北保育園などに作品を贈り続け、今年12月の寄贈が16回目となった。
作品はクリスマスタペストリー、布製のボール、フェルトで作った絵本、釣り堀セットなど。子どもたちがひも結びやボタンの掛け外しを楽しみながら練習できるように工夫を凝らしている。
「電子ゲームが人気の時代に、子どもたちが手作りの作品へ興味を持ってくれるのだろうか」と感じたこともあった。ところが、保育園へ丹精込めた作品を届けると、園児たちは大喜び。興味津々で作品を手にして遊ぶ姿に励まされ「また制作に取り組もうと感じる」と話す。
サークルの設立10周年を迎えた12年には、展示会「10年の歩み展」を開催。来場者が作品の一部を縫う「一針ボランティア」を実施し、完成品を保育園に届けたこともあった。
現在、サークルには、40~80代の女性メンバーが25人所属する。月に1回市民活動センターで午前10時~午後3時の間、それぞれが都合のいい時間に参加できるようにしている。お茶を飲んだり、会話を楽しみながら作品を制作する。
三澤さんの自宅には、これまで作品を寄贈してきた保育園の園児、保育士からの「すてきな作品をありがとう」「子どもたちが夢中になって遊んでいます」とつづられたお礼の手紙や似顔絵が保管されている。「全てサークルメンバーの宝物。活動してきて良かった」と目を細める。「無理せず、みんなが楽しく過ごしながら、作品を制作し続けていきたい」と、ぬくもりあふれる作品をこれからも子どもたちへ届けていく。
(松原俊介)
三澤 洋子(みさわ・ようこ) 1940(昭和15)年6月12日生まれ。函館大妻高校卒業後、NHK函館放送局に入社した後、函館競馬場へ転職。63年に結婚した会社員の夫の転勤で札幌、室蘭市への転居を経て、70年に苫小牧市へ。現在は苫小牧市春日町在住。日本赤十字奉仕団にも所属する。