かなり冷え込んだその日の朝、記者は友人と待ち合わせのためR町に向かっていた。氷点下14度を示している車の温度計を見ると、釣るぞという気勢がそがれてしまうが気合を入れながら車を走らせていた。
午前8時すぎに待ち合わせ場所であるコンビニに到着すると、すでに友人は車の中で待機していた。簡単な買い物を済ませ友人の先導の下、車2台で釣り場に向かった。太陽が出てしばらく時間がたっているが気温は一向に上がらない。厳しい釣りになることは初めから覚悟していたがこれほど寒くなるとは予想していなかった。もしダメだったら早々に釣りを切り上げて温泉に入り宴会でもしようと事前に話し合っていたが、どうもその通りになりそうだ。15分ほど走ると目指す釣り場に到着。まだ雪のない河原に車を進め、ポイント横に駐車した。川はまだ結氷していないので釣りには全く支障がない。車を降りて釣りの準備をしていると、すぐに手先の感覚がなくなってくる。
いつもアメマス釣りで使っている9・6フィート#5/6ロッドにラインを通して、12フィート3Xリーダーをセット。長くとったティペットに#12エッグフライを結んで釣りを始めた。ネオプレーンウェーダーに防寒着を着て完全武装しているので寒くはないが、手先だけはどうしようもない。糸を結ぶことが多いフライフィッシングでは指付きのグローブを使うことができない。最初のポイントは友人に譲り、その一つ上のポイントを攻めることにした。水深1・5メートルほどのプールの底を偏光サングラスでのぞき込むと、30~40センチくらいの小型アメマスが見えた。すぐにマーカーを水深に合わせてフライを投入。エッグフライが底を転がるように流すと水面を流れていたマーカーが急に止まった。さおをあおって合わせると、体をくねらせてヒット。ゆっくりとラインを手繰り寄せると30センチちょっとのアメマスが釣れた。
気を良くして、キャストを続けると次第にガイドが凍り出した。さおごと水に漬けて氷を解かしながら釣りを続けたが、あまりの寒さで指が痛くなってきた。30~40センチのアメマスを10匹ほど釣ったところでついにギブアップ。さおを畳んで車に戻り、温泉に直行することにした。
(大中吉隆)