公立千歳科学技術大が支笏湖地域の観光活性化へ向け、地元との新たな産学官連携事業「支笏湖デザインプロジェクト」を立ち上げた。同大の持つ技術や知見、人材を観光や教育など地域振興に活用する。拡張現実(AR)技術を使い、かつて支笏湖と苫小牧を結んだ旧王子軽便鉄道(山線、1908年~1951年運行)を電子端末上で再現する取り組みも進める。
プロジェクトは同大情報システム工学科長の曽我聡起教授を中心に約10人の同大の教員や学生、民間の技術開発者などで取り組む。国立公園として豊かな自然と生態系を育む支笏湖を舞台に、先端技術を提供する趣旨だ。ARとは現実の風景にコンピューター制作の画像や映像を組み込む技術。実際に見られない物や場所を分かりやすく理解できる。
プロジェクト開始を記念する講演会「オープンサイエンスパーク千歳」がこのほど、支笏湖ビジターセンターで開かれ、関係者が各自の活動や技術を解説。ソフトウエア開発者でつくる市民団体「MOSA」の池田純二暫定代表は、旧山線鉄道を走っていた蒸気機関車(SL)のARの映像を見せ、「タブレット端末やスマートフォンでかつてのSLの勇姿を見られる」と説明した。
同日に示されたAR映像では画面上で千歳川に架かる山線鉄橋に実寸大のSLが現れ、白煙を上げて走る。湖畔や市街地を上空から見下ろす視点の映像もあり、各観光地を選ぶと、360度を見渡せる画像と説明文が表示される。体験した出席者はタブレット端末を持ち、現実的な映像に感嘆していた。
同プロジェクトは今後、支笏湖温泉で山線鉄橋を活用した地域振興に取り組む「支笏湖・山線プロジェクト」と連携し、AR技術の実用化を目指す。SLの他、線路や停車場の再現も検討する。ARを教材として地域理解の教育にも生かしたい考え。曽我教授は「ARは質の高い魅力の発信と体験ができる。地域おこしに貢献できると期待している」と話す。