アイヌ民族文化財団(札幌市)は「文化の日」の3日、白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)を無料開放した。伝統芸能上演や刺しゅう、木彫、弓矢、ムックリ(口琴)、調理などの文化体験を敷地内の各所で繰り広げ、来場者数は昨年を439人上回る7131人(速報値)となった。ゲート前には開場前から長蛇の列ができ、多くの人でにぎわった。
「文化の日」の無料開放はアイヌ文化への理解を広げる機会として2022年度に始め、初年度の来場者数は6490人、23年度は6692人で、今年度は7000人を超えた。村木美幸本部長は「無料開放日の認知度の向上を感じており、今年は好天にも恵まれた」と話す。
体験交流ホールでは伝統芸能の上演回数を通常より増やし、この日限定の舞踊体験イベントを追加した。体験学習館では、1日1回の調理体験を3回に増やしたほか、通常は工房で実施する刺しゅう体験を随時会場で受け付けて対応した。
屋内で体験できる弓矢体験には行列ができ、伝統的コタン群で行われる衣装の試着体験も人気を集めた。ウポポイPRキャラクター「トゥレッポん」との写真撮影は、幼児を連れた親子連れで引きも切らず、子どもたちの歓声であふれた。
木彫体験を楽しんだ札幌市豊平区の会社員、米田安菜さん(33)は祖母、小学4年の長男と3人で初来訪。「子どもが学校でアイヌ文化を学んで興味を持ったので、初めて訪れた。きょうは学んだことを教えてくれたので、成長を感じている」と笑顔。刺しゅう体験を家族4人で楽しんだ札幌市厚別区の会社員、佐藤晴大さん(50)も「体験を通して知らなかったことに触れることができた。いい施設だ」と満足そうに語った。
村木本部長は「学びや体験を親子で共有し、同じ時間をゆったりと過ごす一日にしてもらえたら」と話していた。