白老町の地域おこし協力隊員の千田聖也さん(27)が大町商店街の地域食堂「グランマ」の運営に奮闘している。同店は地元の女性高齢者グループが切り盛りする食堂として知られている。今年10月に運営母体のNPO法人しらおい創造空間「蔵」から経営を引き継いだ千田さんは、「高齢者の生きがいづくりの場として店の可能性を広げたい」と張り切っている。
グランマは2009年、地元の女性高齢者グループ「麻の会」メンバーが携わる地域食堂としてオープン。白老で収穫した山菜の料理などを提供し、高齢者の個性や能力を生かした店づくりが全国的にも話題を呼んだ。開業後しばらくは安定運営を続けたものの、次第に客足が落ち込んだ。このため、食材費や店の賃貸料、有償ボランティアの同会メンバーの日当といったコストが重くなり、厳しい経営が続いていた。
今年10月に同町の地域おこし協力隊員=文化芸術担当=になった千田さんは、グランマの事情を知り、自ら「麻の会」代表として運営に関わることを決断。高齢化社会が進展する中、高齢者の生きがい創出という店の存在意義と可能性に魅力を感じたからだった。NPO法人しらおい創造空間「蔵」から経営を引き継ぎ、同月、グランマを再出発させた。
白老出身の千田さんは東京の大学を卒業後、成長が著しいインド経済に興味を抱き、同国にある大学の大学院で2年間経営学を学んだ。在学中、同国でIT(情報技術)関連企業への人材紹介会社を起業し、仲間とビジネスを軌道に乗せた。経営は順調だったが、「高齢化が進む日本のため、郷土のために何かできることはないか」と考え、4年間のインド滞在に区切りを付けて今年夏に帰国。白老町の地域おこし協力隊に応募し、採用された。
「高齢化社会の中でのビジネスモデル創出」をテーマに千田さんは、町の文化芸術活動に携わりながら、平均年齢70歳代後半のスタッフ8人と共にグランマの運営に奮闘。日替わり定食や白老牛の牛丼などを提供し、今後、新たなメニュー開発にも挑戦していくという。
地元食材として目を付けた一つがサメ。海水温の上昇からか近年、白老の海でもサメ類が回遊するようになり、漁網などを破る被害も出ている。「やっかい者として扱われているが、食材として利用できないか研究中です」と話す。サメの他、シカ肉料理もメニューに加えたいという。
店の運営はまだ厳しいが、野草茶の販路拡大や弁当の配達事業など収益向上の道を模索していく考え。千田さんは「高齢者の社会参加を支援するグランマの存在は、これからより重要になる。地域の人々の居場所になるような店をつくっていきたい」と意気込んでいる。
店の営業は月曜から金曜の午前11~午後3時(ラストオーダーは午後2時)。