むかわ町穂別の文芸ほべつの会はこのほど、会誌「文芸ほべつ」18号(A5判、94ページ)を発行した。メンバーの高齢化などを理由に今号を終刊とし、初刊からの35年の歴史を閉じる。代表の鹿糠すえ子さん(80)は「大きな目標があったわけでもなかったが、楽しんでできた。みんなで気に掛け、支え合ってきたからここまでできた」と感謝の思いを語る。
文芸ほべつは1984年11月、当時の穂別町で教員だった入谷寿一氏と遠藤整氏の声掛けで地元を中心に仲間が集まり創刊。以来、町内外から寄せられた多くの小説や随筆、俳句などを収録し、不定期で発刊。幅広く読みごたえのある内容を読者に届けてきた。
その一方で、書き手の高齢化が進み、中には病気を患う会員も。昨年1月には長年、会長として尽力した鹿糠さんの夫、貢さんが他界。今年1月には「こんな素晴らしいこと、まだ続けるべき」と活動の継続を訴えてきた地元の詩人、故斉藤征義さんもこの世を去った。また、この間、取りためておいた作品が胆振東部地震の発生で一部紛失したため、再度作品を集め直す作業に時間を費やした。前回の発行からは6年の月日が流れていた。
最後となる18号は貢さんの追悼特集として、会員が寄せた追悼文や追悼句、貢さんの遺句を紹介。文芸作品としては、斉藤さんの詩「れら ぱる れら」を収めたほか、詩、短歌、俳句なども掲載し、「仲間の気持ちが収まっている気がする」と語るすえ子さん。「今回、『ご苦労さまでした』と声を掛けてくれたり、『やめない方法はないのか』と言ってくれる人がいたのが本当にありがたかった」。最後を飾るにふさわしい内容になった。
文芸ほべつはここでいったん幕を下ろすが、すえ子さんは「書くことはみんな好き。また何人かで『やろうか』って声が出てきたらうれしいですね」と優しい笑顔を見せた。