首都クアラルンプールのホテルには、地元から約60人の港湾・物流の関係者が集まっていた。ポートセールスの目玉である苫小牧港利用促進協議会主催の「苫小牧港セミナー」。会長を務める岩倉博文苫小牧市長は「新たな交流関係を築く絶好のチャンス」と互恵関係の構築に向け、出席者に力強く呼び掛けた。
苫小牧とマレーシアを結ぶ海上ルートは今年、小口混載によるコンテナ輸送を始めたばかり。会場では苫小牧港の関係者が来場した現地関係者と意見を交わしながら、貿易促進の可能性を探る光景が広がった。
セミナーでは日本企業の現地事務所からの参加もあった。1年半前から日本産の青果をマレーシアに輸出しているSEKAI MARCHE(東京)は、道産品を含む全国の青果を東京からコンテナ貨物で輸出。杉山亜美社長は「苫小牧港から小口混載で送ることで国内輸送コストを抑えられる」と大きな関心を寄せる。
十勝管内中札内村のとかち製菓と取引しているイオンの現地法人、イオンマレーシアの栄田悌次長はイスラム教徒向けに欠かせないハラル認証取得の必要性を示し、「この認証を取得している日本の食品は人気が高い。とかち製菓の和菓子も認証があるから売れ行きが良い」と評価した。
一方、世界第4位のタイヤメーカー・コンチネンタルタイヤ(ドイツ)は産業用タイヤをマレーシア工場で生産。5月には港湾作業車両向けのタイヤをコンテナ貨物で苫小牧港経由で日本に出荷した。ポルトガル工場から農耕用タイヤを苫小牧港に輸出した実績もあり、コンチネンタルタイヤジャパン産業タイヤ部門の石田充弘国内販売責任者は「今後も北海道への営業を強化したい」と期待する。
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ポートセールスでは、マレーシア最大規模のポートクラン港と第2位のタンジュンペラパス港も視察。担当者に苫小牧港をアピールしたが、運営会社の担当者はいずれも「知らなかった」とし、認知度が課題であることを物語った。
過去9年にわたる海外PRでは中国の上海や大連、インドネシア、ロシア、ベトナム、タイなどを訪問。岩倉博文市長は「インバウンド(訪日外国人旅行者)の増加に伴い、北海道の地名が東南アジア各国に浸透し、セールスをしやすくなった」と一定の成果を示す。だが、国際的に見ると苫小牧港はまだ無名に近い存在。苫小牧港管理組合の佐々木秀郎専任副管理者は「北海道ブランドと連動させながら名前を売っていきたい」と継続する大切さを訴えた。
道は2025年に道産食品の輸出額を1500億円へ引き上げる目標を設定。苫小牧港長期構想でも北海道の「食」を世界へ届ける港(フードポート)づくりをビジョンの一つにした。来春には苫小牧港・東港に大型冷凍冷蔵倉庫が竣工(しゅんこう)し、道産食品の輸出体制が強化される。
新たなステージに向け、地道な売り込みが今後の苫小牧港発展の大きな鍵になる。
(報道部 伊藤真史)