原点回帰

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2019年12月3日

  苫小牧市が誘致に取り組んでいる、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)は先週、国への申請主体となる北海道が見送りを決めた。将来の余地は残して。国会がカジノ解禁を議員立法で決める前から誘致に動いていた苫小牧市は、はしごを外された格好。政治は見えない所で動く。

   コラム子は以前からスケールの縮小傾向が見える地域経済に形のない不安がある。自治体の組織が首長の掲げる経済政策実現に走るのは理解できるが、現場は並行して地域経済、産業の当面の課題に有効な手を打てているだろうか。

   苫小牧は明治期、渋沢栄一の王子製紙が工場を建設して以来「紙のまち」として歩んできた。若い野心家たちが戦前、大日本再生製紙の工場を勇払に建てたのも将来を展望できたからだ。公園の目前に巨大な船が着岸する北日本随一の港は、高い志で未来を描いた先人が苦闘の末、変哲のない砂浜に世界で初めて掘り込み式の人造港を実現した誇らしい歴史の証し。このまちは国の産業の高度化、エネルギー政策の転換に対応しながら、先人が製造業と港を軸に経済と生活の理想郷を目指してきた。

   経済はまちづくりの原資でありエネルギーだ。働き、学び、集い、楽しむ場を創るのがまちづくり。しばらくアジアに目を向けていた製造業に国内回帰の動きがある。苫東を抱え、食糧基地を認める北海道の海の玄関口・苫小牧はどう対応する。戦略を急ごう。(司)

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