10年前と比べて

  • 土曜の窓, 特集
  • 2024年11月2日

  気象庁が発表する情報の近年の進化は目覚ましく、私が気象キャスターとして勤め始めた10年ほど前と比べると、天気予報で扱うデータは大きく様変わりしました。

   その中で、今は無くてはならない情報というと、大雨による危険度が一目で分かる「キキクル」です。土砂災害や浸水、洪水の危険度を地図上で色分けして表示するもので、2013年に「土砂災害警戒判定メッシュ情報」として提供が始まりました。17年には浸水や洪水の危険度情報の提供も始まり、19年から20年にかけては、段階的に「土砂災害警戒判定メッシュ情報」が約5キロ四方から約1キロ四方の領域に高解像度化して提供されるなど、年々情報が増え、より細かい情報に変わってきました。

   また、「キキクル」以外でここ数年での大きな変化というと、「線状降水帯」についての情報が発表されるようになった、ということです。

   気象庁では、レーダーなどにより「線状降水帯」と考えられる雨域が確認され、なおかつ、土砂災害や洪水災害の危険度が急激に高まってきた場合に、「顕著な大雨に関する情報」として発表しています。この情報は16年6月から提供が開始され、情報が発表された場合は、大雨による災害発生の危険度が急激に高まっている状況となります。

   さらに22年からは、線状降水帯が発生したとみられる時だけではなく、今後、線状降水帯による大雨の可能性がある程度高い場合に、半日程度前から、その呼び掛けが行われるようになりました。この情報も今年から進化しており、これまでは例えば九州北部や九州南部など、地方単位で情報が発表されていましたが、今年からは福岡や熊本など、より範囲を限定した府県単位で発表されるように変わっています。

   今年は9月30日までに、この情報の呼び掛けが計81回行われ、このうち実際に線状降水帯が発生したのは8回と、的中率は約10%となっています。これは、気象庁が運用開始前に想定していた値より低いということですが、線状降水帯にはならずとも、情報発表時に3時間降水量が100ミリ以上となったのは27回あったということで、この呼び掛けが行われたときには、大雨災害への心構えを一段高めることが重要になってきます。

   ところで、日々の天気予報の的中率をご存じでしょうか? 知らない方は、その高さに驚くかもしれません。(続く)

  (気象予報士)

過去30日間の紙面が閲覧可能です。