(下)包囲網狭める経済界 知事の表明秒読み段階、苫市議会にさらなる「同意」

  • IR迫る判断, 特集
  • 2019年11月21日
苫小牧市議会臨時会閉会後に報道陣の取材に答える岩倉市長=10月28日午後10時半過ぎ、市役所
苫小牧市議会臨時会閉会後に報道陣の取材に答える岩倉市長=10月28日午後10時半過ぎ、市役所

 10月28日午後10時半過ぎ、苫小牧市議会臨時会が9時間半に及ぶ異例の審議を終えて閉会した。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の環境影響調査費を計上した補正予算案と、議員提案によるIR誘致推進の決議案の2件を審議。どちらも賛成多数で可決されたが、終了後に岩倉博文市長は取り囲んだ報道陣に対して「(IR誘致に向けて)まだスタートラインにも立っていない」と冷静に答えた。

 その言葉の背景にはIRが日本で前例の無い事業という特殊事情がある。IR整備法では国に対する誘致認定申請の手続きを都道府県、または政令指定都市に限定。誘致を推進する苫小牧市にとっては道の決定が大前提となるが、鈴木直道知事がその是非を「年内に判断する」と表明したのは10月2日の道議会。市は、環境調査に係る予算確保や議会決議も得てきたが、過熱する国内誘致レースの中では「スタート前」の足踏み状態にすぎない。

 誘致表明をした大阪府・大阪市や長崎県、和歌山県が事業者選定を進め、国内では具体的な検討が日を追うごとに加速している。推進派の道内経済団体は他の候補地から出遅れることを懸念。「早期の誘致表明を」と道に対して強く要望するなど、決断を迫る包囲網は着実に狭まっている。

 さらに道の態度表明の遅れは、苫小牧市民の理解が進まない状況も生んでいる。市が行ってきたセミナーでは、多くの市民がIR事業の規模や経済効果、インフラ整備、ギャンブル依存症対策などの情報を求めた。しかし、具体的な内容は道が誘致表明後、IR事業者とつくる区域整備計画で示されるため、現時点で市は詳細内容を説明できないのが実態だ。

 また、道がIRを誘致すると判断した場合でも、さらに手続きは必要になる。IR整備法では「地域における十分な合意形成」を求めており、国への認定申請を行う前に道議会の議決と立地市町村の同意を得ることが条件になる。岩倉市長はこの「同意」を市議会の議決で判断する方針で、10月の臨時会で可決された誘致推進決議とは異なる形で市議会に諮る考えを表明している。

 国が示すIRの開発プランは国内3カ所が上限で、早ければ2020年代半ばの開業が想定されている。今月19日には政府が、自治体によるIR誘致の申請期間を21年1月4日から同7月30日までとする日程を公表。今後1年間は計画検討に充てられるようスケジュール設定をしたが、苫小牧市の担当者は誘致が決まっていない現状も踏まえて「余裕がある期間とは言えない」と指摘する。

 経済効果や雇用創出などに期待が集まる一方、治安悪化や環境影響への不安が交錯するIR。北海道の未来をどう描くのか、鈴木知事の判断は秒読み段階に入っている。

 北海道経済連合会と道商工会議所連合会、道経済同友会、道観光振興機構の4団体は10月21日、道に早期のIR誘致表明を促す緊急共同宣言を発表し、「北海道のIRを考える会」も設置した。11月5日には、道商工会連合会、道商店街振興組合連合会、道建設業協会、道中小企業団体中央会を加えた8団体で、道議会最大会派の自民党・道民会議の全議員で構成するIR検討調査会にも協力を要望した。

 (報道部 河村俊之)

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