道内外で「焼肉徳寿」を展開する梨湖フーズ(本社札幌、高木勉社長)のグループ会社、徳寿ファーム(同)は、白老町森野で和牛生産牧場の運営に乗り出した。肥育した肉牛を白老ブランドの白老牛として、梨湖フーズの焼き肉店で提供する。牧場では生産した牛肉のメニューを提供するファームレストランの開設も計画しており、6次化農業の体制を構築する。
徳寿ファームが森野14の道道白老大滝線沿いに開設した牧場の面積は19ヘクタール。牧場遊休地を取得して7月から整備に取り掛かり、120頭の黒毛和牛を肥育する牛舎(鉄骨造り平屋、約830平方メートル)をはじめ、堆肥棟、事務所と従業員宿舎を兼ねた管理棟を今月完成させた。早々に生後9カ月ほどの子牛15頭を導入し事業を開始した。
来年には180頭を受け入れる牛舎をさらに建設し、最終的に300頭規模の肥育体制を整える。
牧場では毎月15頭ほどの子牛を仕入れ、20カ月程度かけて育てた和牛を毎月15頭ペースで出荷。生産した牛肉は、梨湖フーズが札幌市や千歳市、仙台市で営む焼き肉店15店舗などで提供し、白老牛の消費と普及を推進する。初出荷は2021年7月を予定している。
徳寿ファームは肥育だけにとどまらず、安定的な出荷体制を築くため、数年内に牛の繁殖を始める計画も立てている。受精卵の移植技術で乳牛に代理出産させる考えで、9月に包括連携協定を締結した酪農学園大学のアドバイスを受けて繁殖、肥育、出荷の一貫体制を目指す。
また、飼育する乳牛の生乳を使ったチーズの工房を牧場内に開設。梨湖フーズが札幌市内で運営するスイーツ店などに、徳寿ファーム産の牛乳とチーズをスイーツ商品の原料として供給する。広大な牧場の有効活用でビニールハウスも整備し、イチゴなど果物生産にも取り組む。
さらに、牧歌的風景を楽しみながら牛肉料理が味わえるファームレストランを21年にオープンさせ、白老町の新たな観光・食のスポットとして観光客や地元住民に利用してもらうなど、6次化のマルチ農業を展開する。将来的には牧場近くの用地でオーベルジュ(宿泊施設を備えたレストラン)を開設する考え。高木社長は「今後4年以内に牧場の完成形を実現させ、6次化のモデル的存在になれば」としている。
肥育事業の新規参入に必要な事業費8億8000万円については、北洋銀行と日本政策金融公庫札幌支店が連携し2年間にわたって支援。金融機関も飲食店経営の企業による農業参入に期待し、計画推進をサポートしていくという。