カモ類に注目して 渡り鳥の季節

  • レンジャー通信, 特集
  • 2024年11月1日
マガモの雄(手前)と雌
マガモの雄(手前)と雌
繁殖期が終わりエクリプス羽になった雄
繁殖期が終わりエクリプス羽になった雄

  だんだん日が短くなり、冷たい風を感じる季節となりました。ウトナイ湖では9月上旬から、ガン・カモ・ハクチョウ類といった渡り鳥が続々と到着し、湖面にぎわいをもたらしてくれています。夜や早朝に編隊を組み、互いに鳴き交わしながら飛んでいく姿を見掛けた方もいらっしゃるかもしれません。観察のしやすい大型の水鳥について、当センター職員が今季初めて到着を確認した日は、ヒシクイが9月16日、マガンが9月21日、コハクチョウが10月4日、オオハクチョウが10月10日でした。これらの水鳥は、夏にロシア東部で子育てをし、越冬のために南へ移動する途中で、ウトナイ湖を中継地として利用しています。

   大型のガン・ハクチョウ類に隠れてなかなか見えにくいのですが、カモ類も続々と到着しています。私は学生時代に冬の皇居のお堀でカモ類の研究をしたことがあり、ヨシガモのような水面で餌を食べる仲間、キンクロハジロのような水に潜って餌を食べる仲間など、一言で「カモ類」といっても多種多様な種類がいるんだなと感じながら観察に取り組む日々でした。

   今年5月よりウトナイ湖サンクチュアリに着任し、初めてウトナイ湖のカモ類の調査に臨みましたが、皇居での観察と比べるとカモとの距離が遠く、観察はかなり難しく感じられました。また、繁殖期が終わる7月ごろに美しい羽が抜けて、地味な雌と同じような羽の色をしたエクリプス羽と呼ばれる雄が、雌のカモ類と混在するため、どのカモ類も茶色や黒のかたまりにしか見えないこともあります。それでも、シルエットやくちばしの形を頼りに識別しながら、日々の調査・観察に携わり、渡り鳥との一つ一つの出合いを大切にしたいと思います。

   広大なウトナイ湖でガン・カモ・ハクチョウ類を観察するためには、望遠鏡や双眼鏡があると便利です。ネイチャーセンターには望遠鏡を設置しているほか、今見られている渡り鳥のご案内や双眼鏡の貸し出しなども行っています。土・日・祝日の午前9時半~午後4時半に開館しておりますので、ぜひお立ち寄りいただけますと幸いです。

  (日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリ・石川智大レンジャー)

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