自転車競技で長く競技の一線にいた苫小牧市在住の作業療法士、木賊(とくさ)弘明さん(44)が10月に佐賀県などで開かれたSAGA2024国民スポーツ大会に道代表監督として参加し、指導に当たった札幌市出身の道代表選手、渡辺一気(19)=京都産業大=がロードレースAで10位に入った。
主にスプリント系種目で国内外のレースに出場を重ねた競技から19年に引退した木賊さんは現在、白老町立国民保健病院に勤務している。21年には東京五輪に医療スタッフとして参加した。
木賊さんにとって道代表監督として参加する初めての大会になった今回の国スポ。レース戦略は渡辺の判断に任せ、「体調面のケアや食事のサポートに徹した」と言う。
以前の国民体育大会から名称を新たにした「国スポ」。国体に限れば選手として過去に10度出場してきた木賊さんは、経験と知識を基に栄養の取り方やレース本番に向けた調整方法を選手に伝え、実践させた。「気温や天候に合わせた体温調節や水分補給の方法は五輪で医療スタッフを務めた経験が役立った」とも語る。
今回の国スポに出場した渡辺は昨年の世界選手権(英国)に日本代表として出場した有望選手で中学生当時から木賊さんの指導を受けてきた。木賊さんが現役引退後、北海道科学大学高で自転車部のコーチに就任していたため、渡辺も同校で学んだ。その後、京都府内の大学に進学後もオンラインで体のケアやトレーニング方法に関した助言を受ける師弟関係が続いている。
国スポのロードレースAでは設定されたコース延長106キロ強を駆け抜けた。71人がエントリーし、完走は半数以下の28人と過酷な展開に。2時間42分6秒のトップでゴールに入った群馬県の第一人者、金子宗平(太陽誘電)と10位渡辺の差は3分50秒差だった。
今年はこの競技で若手選手を育成するための夏季欧州レースのメンバーにも選ばれ、気鋭の10代として注目株となっている渡辺。資質について木賊さんは「今後、オリンピック出場を十分に狙える位置にいる」と太鼓判を押す。自身の国スポでの監督経験を「選手の体調不良やけががなく終われたことが何より。一番ほっとしている」と総括した。