重要なニュースを不覚にも記憶の棚に上げて塩漬けにしていることがある。災害や事件、噴飯ものの不祥事、政治家の不誠実。湧き出て続く出来事にすぐに目がいく。気楽に見られるサスペンスドラマよろしく前時代的で原発に関わって根が深い関西電力の不祥事さえ、歳末には「そんなこともあった」となるかもしれない。数えられないほど見た『悪い奴ほどよく眠る』ような汚れ話より、厳しく阻むものにひたすら向かい、ごう敵を伏し、伏され、負傷してなお互いの健闘をたたえ合うスポーツに心は動く。目頭がかーっとなるたび衰えてなえやすい精神のバッテリーはフル充電される。
つかの間、心を解放して世の中に目を向ける。難問は地域に国に、世界にもいっぱいある。地域なら、誘致に名乗りを挙げた横浜市などでも賛否や是非をめぐる意見が鋭くなっているカジノを含む統合型リゾート施設(IR)、JR北海道の経営再建と日高線存廃、現実の暮らしの影響を量り切れない中でひたひた進むわがまちの人口減少、災害の備え。割り切れるように解ける簡単な計算とは違う。
だから声を出す人、心を配る人の思いを新聞にのせる。読者に届ける。耳を澄まさなければ聴くことのできない声を伝える。できるだけ解に近いものや、足りないこと、最大公約数を皆で見つけるため。問いを考え、不安や憤りを顔がほころぶニュースにつなげるため。改めて心に決める。(司)