胆振東部地震からの 復旧・復興シンポジウム キーパーソン4人がパネルディスカッション 住む町が発展するために

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  • 2019年10月28日
橋本豊さん
橋本豊さん
澤口研太郎さん
澤口研太郎さん
井内聖さん
井内聖さん
鬼海将一さん
鬼海将一さん

  胆振総合振興局、胆振町村会主催の胆振東部地震からの復旧・復興シンポジウムがこのほど厚真町総合福祉センターで行われ、大きな被害を受けた厚真、安平、むかわの各町で復興のキーパーソンになる4人がパネリストとして「次世代につなぐ創造的復興について」をテーマに意見を交わした。地域で現在取り組んでいること、またこの先、自分の住む町が発展するために必要なことなどそれぞれの思いを紹介する。

  町の活性化に役立ちたい

   高丘自治会・橋本豊会長(厚真町)

   復旧復興はもとより、少しでも町の活性化に役立ちたいと思い活動している。

   高丘地区は住宅の全壊や半壊などさまざまな地震被害を受け、(住居の関係で)地元の自治会から出て行ってしまう人もいるが、それでも地元がなくなるわけではない。震災当初は先のことを考えられない人でいっぱいだったが、今は気持ち的にも明るく、仮設住宅で生活しているが、地元に戻って元の生活を取り戻す意気込みで頑張っている。全国から支援物資や義援金をいただき、心温まる思い。

   別の場所で新たに住居を構える方もいるが、全員が農業者。元の自然豊かな緑が戻るにはまだ数年かかるかもしれないけれど、日々話し合いを重ね、未来の子どもたちに残していけるよう研さんしていきたい。

  若い世代が 力を合わせて

   イチカラ実行委員会・澤口研太郎代表(厚真町)

   震災をきっかけに町の未来を考える中で、町内外の人が集うコミュニティースペースをつくりたいと思い、同年代の仲間で「イチカラ実行委員会」を立ち上げた。被災当初は言葉にならない思いだったが、ささいなことが幸せだということを改めて感じた。いろんな方が支援してくれたおかげで今がある。

   こういう経験をしたからこそ、いろんな角度や視点から厚真を見て、自分たちの力で少しずつ町をつくっていけたら―という思いを持って活動している。自治会の運営にも携わらせてもらっていて、これから高齢化が進む中で僕らの上にいる世代が少ない状況。各自治会に若い世代がいるので、力を合わせて盛り上げていきたい。

   自治会や町内外の垣根を越えて、厚真町の将来を楽しく考えていけたら。この場所にいろんな人が集まってくることで、多様な未来が切り開けると思う。10年後、20年後にやって良かったなと思えるような活動をしていきたい。

  子どもたちの ために取り組む

   安平町復興ボランティアセンターの井内聖センター長(安平町)

   一般社団法人として復興ボランティアセンターを立ち上げ、経済的なことを含めて町のため、子どもたちのためにさまざまなことに取り組んでいる。

   昨年、当時早来小6年生の児童が8000人の笑顔プロジェクトを行い、たった26人で町内外から3万4000人以上の笑顔を集め、町民も勇気づけられた。自分のためではなく、誰かのために、仲間と協力して、何かを成し遂げる―。きっとこの子たちが町や地域の担い手になってくれる。この町をもう一度つくり上げていくのは子どもたちだと感じた。

   高校で安平を離れ、4年前に戻ってきたが、小さい頃にお世話になったおじさんが声を掛けてくれたり、役場の方が小、中学校、部活動の先輩だったりして、やっぱり地元は居心地がいいなと思う。ボランティアセンターは人件費ゼロでみんなが兼業で運営しているため、3年間限定という期間だが、その中でどれだけ居心地のよい町をつくれるのか考えている。なかなかうまくはいかないのだけれど、考えてつくっていけたら。

  挑戦する姿に 学ぶことが

   鵡川高校野球部の鬼海将一監督(むかわ町)

   野球部の子たちと一緒にボランティアをしてきた。数えてみると、60回以上ボランティアに参加しており、野球以外の活動の方が多かったのでは。子どもたちの挑戦する姿に私も学ぶことがあったし、高校野球の枠を越えた可能性を感じた。

   避難所でも支援物資は届くが、一人に寄り添う時間がなく、そこで彼らの役割は大きかった。子どもたちが自発的に関わる時間をつくることが必要。エネルギーに満ちあふれ、後先考えずに挑戦できる。それをうまく利用できないか。

   「鵡川高校で野球をやりたい」という子たちが多くいるが、学校とグラウンドの行き来だけで3年間を終わらせてしまうのはもったいない。野球だけではなく、農家さんのお手伝いやシシャモのアルバイトなど町と関わる時間をつくって「むかわ町にはこんなことがあるんだ」と感じてもらいたい。私自身も高校時代に道の駅の風呂の掃除や地域の方と関わりを持たせてもらったことで、「むかわに戻ってやりたい」と思った経緯がある。大学で一度は外に出るが、子どもたちが「むかわに来て良かった」「ここで働きたい」と思うような高校の野球部であることが今の私の目標。

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