子どもから大人まで幅広い方々の鑑賞機会の創出を目指すこの展覧会では、人や動植物などをかたどった、親しみやすい絵画をはじめ彫刻、写真作品105点を展示しています。当館の収蔵作品をはじめ、「彫刻のまち」として知られる旭川市の彫刻美術館や「写真のまち」東川町の文化ギャラリーなどから貴重な作品もお借りしているので、見応えのある内容となっています。
本展のテーマとして掲げた「いのちと自然の造形譚(ものがたり)」の根底には、人間や動植物、そして、それを取り囲む自然といった森羅万象が渾然一体になったイメージがあります。また、展覧会名にある「造形譚」とは、本展に合わせて考案した造語で、形あるものを作り上げることを意味する「造形」と、「ものがたり」や「おはなし」を意味する「譚」を組み合わせたものです。親しみやすいように、あえて「ものがたり」というルビを振っています。
さらに、一編の小説や音楽を味わうかのようにご鑑賞いただくことを狙い、章仕立てによるテーマを各セクションに設けています。その中には「人とその気配」「音をイメージする」「光と影に感じる」というように五感で味わう鑑賞を意識したものもあります。この他にも、感性や想像力に働きかけるような問い掛けを記したパネルや、参加体験型のコーナーなどもご用意しています。この機会に、一つひとつの作品とじっくりと向き合うことで、イマジネーションを働かせながら、個々の作品に込められた意味や内容、そして、そこから広がる物語に思いをはせてみてはいかがでしょうか。
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苫小牧市美術博物館で11月24日まで開催されている企画展「いのちと自然の造形譚(ものがたり)」。幅広い年代の鑑賞を促すため、展示方法に一ひねり加えた作品展となっており、同館の細矢久人学芸員が鑑賞のポイントなどを解説する。全3回。