運動に根を詰めて取り組んだ経験がない。40歳代まで年に何度か軟式野球やソフトボール、アイスホッケーに挑んだが、すべて下手のままで終わった。
たまにプロ野球中継をテレビで楽しむだけの静かな生活に、この秋、巨大な波が押し寄せた。特に関心はなかったラグビーのワールドカップ。ラグビーはテレビ中継を見るのも初めてのこと。テレビ画面右下のルール説明を、繰り返し読みながらの観戦だ。巨大な男たちが全力で走り、ぶつかり、押し合う迫力に、目が離せない。
テレビの視聴率が高かったようだ。報道によると準々決勝の日本―南アフリカ戦の、関東地区の平均視聴率は41・6%。北部九州地区ではプロ野球日本シリーズも健闘したようだが、ラグビーが力強く押し勝った。傲慢(ごうまん)の周りを取りまく打算や保身、忖度(そんたく)や追従という薄汚れた言葉ばかりこの数年、聞かされていた。仲間のために、チームのために、誇り―という言葉をかざし恐怖を越えて走る青年たちの姿が、テレビ画面で輝いて見える。夫婦でテレビを見ていた知人宅では途中で少しプロ野球を見た旦那さんが、すぐラグビーに戻ったとか。理由は「かったるい」。
大会はあと、準決勝2試合と決勝の3試合。来月の上旬まで、当たれ、倒せ、引きはがせの絶叫が茶の間に響き渡るか。日本敗退でも、にわかファンは、まだまだ燃え上がりそうな気がする。(水)