任期満了に伴う白老町長選で15日、無投票3選を果たした現職戸田安彦氏(50)。23日に初登庁し向こう4年間の町政運営をスタートさせたが、人口減少時代の中で持続可能なまちづくりをどう進めるか、3期目の真価が問われている。
無投票当選が決まった15日夕、戸田氏は選挙事務所に集まった支援者と万歳三唱で喜びを分かち合った。だが、向き合わなければならない町の課題は山積している。一つが、ポロト湖畔で来年4月開業の民族共生象徴空間(ウポポイ)を軸とした観光施策の展開だ。
戸田町政は早々、壁にぶつかっている。年間100万人を目標に掲げるウポポイの集客力を期待し、町がJR白老駅北側に設ける観光商業ゾーンが暗礁に乗り上げているからだ。物販、飲食、宿泊の民活導入区域に参入する事業者が決まらず、ゾーン内で予定通り建設が進んでいるのは町の観光インフォメーションセンターのみ。事業者参入を促す手立てを早急に整える必要性に迫られている。
ウポポイの来館者を町内に周遊させ、開業の経済効果を地域に波及させる具体的な方策を早く示すことも重要だ。オープンを半年後に控え、町民からは「ウポポイを生かそうとする町の積極的な動きが見えにくい」と指摘する声も上がる。
町立国保病院の改築も懸案事項だ。戸田氏は「病床数20床以上、介護老健施設を存続」とする基本的方向性を示しているが、新しい病院をいつ、どこに建てるかなど具体性に乏しく、東胆振医療圏の医療機関との連携も見据えた改築方針をどうまとめ上げるか注目される。
財政健全化も引き続き重要課題だ。港湾整備など公共投資に力を入れた時代の多額な起債(借金)で危機にひんした町財政は、戸田町政の支出抑制の取り組みで健全化へ向かい、起債残高も減少。2010年度に172億円あった残高は18年度に102億円まで減り、底を突きそうになっていた財政調整期金(貯金)も同年度で8億3000万円にまで増やすなど、戸田氏の手腕は一定評価できる。だが、財政事情の厳しさは変わらず、老朽公共施設の更新や災害対策など今後のまちづくり事業費を確保していくため、貪欲に税収を増やす知恵と行動力がより求められる。
さらに、今年3月に廃止した廃プラスチックごみ原料のバイオマス燃料化施設の跡施設利用をどうするか、50%に迫る高齢化率の進展を背景にした福祉施策をどのように進めるかといった懸案も抱えている。
白老にとって最大の課題は人口減少だ。人口は1985年の2万4560人をピークに減り続け、国の研究機関は2045年に7770人と現在の半分近くになると試算する。人口減に伴う町財政の縮小をはじめ、さまざまな問題がより顕在化していくのは避けられない。
このため、地域の活力を維持する上でも、定住・移住を促し減少の抑制を図る施策の重要性は増す。企業誘致や創業支援、産業振興による雇用創出、他の自治体に先駆けた魅力ある子育て支援策などを打ち出す必要がある。戸田氏は当選後の支持者へのあいさつで「町民と一緒に白老の未来をつくっていく」と3期目の決意を述べた。リーダーシップを発揮し、持続可能な白老づくりに挑む姿勢を町民はじっと見ている。
(白老支局・下川原毅)