増税と食

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2019年10月21日

  消費税が増税され、増えた出費を何で補うか、目下思案中だ。ちなみに2014年の3%アップの時は、食に関わる費用を削って対応した人が多かったよう。この年、苫小牧消費者協会が市民に実施した調査では、増税で節約したものとして外食費、水道光熱費、食費の順に多く挙がり、「食」で上位二つを占めた。

   外食費が1位だったのは、回数を減らすだけで比較的大きな金額を楽に節約できるから。今回の増税では店内飲食の税率が10%になり、同じことが起きる可能性がある。外食チェーンの中には外食離れを防ぐため、一定メニューの税込み価格を据え置き、実質値下げしている店もあるようだ。

   それにしても、全ての外食が軽減税率の対象から外されるべき「ぜいたく食」だろうか。すぐにおいしく味わえるので、確かに価格は自炊より割高。しかし、この国の単身世帯は今や3割を超えている。1人暮らしには高齢者が多く、外食は買い物や料理に困っている人の生活要件になっている。仲間同士の女子会や飲み会は、中高年にもなれば安否確認を兼ねている。離れて暮らす親と子や孫の食事会も同じだ。おいしい物をただ食べているわけではない。

   年金暮らしも働く世代も多くは日々節約している。しかし、節約は本来、無駄遣いをなくすこと。健康や人とのつながりを維持するための必要経費を削らせる増税になるなら疑問を抱く。(林)

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