笑顔

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  • 2019年10月17日

  苫小牧市の公式キャラクター「とまチョップ」をデザインしたマンホールぶたが先月、北海道地方下水道協会などが主催する人気投票で全道1位に輝いた。札幌駅前通地下広場の会場を訪れた人の投票で、函館市のイカや芦別市の星座のデザインを抑えて優勝した。

   このマンホールぶたが設置されているのはJR苫小牧駅南口のココトマ(ふれんどビル)前。北海道地図を背景にアイスホッケーをするとまチョップはとても愛らしい。その笑顔から視線を上げると、もう一つのエガオが目に入る。

   駅前の巨大な空きビル。地方都市の鉄道利用者は減少や低迷が続き、駅前が衰退していく問題は苫小牧に限らない。が、まちの表玄関の真ん前が「廃虚」で、しかもその状態が5年も続いているのは異常としか言いようがない。駅前中心街の活性化を目指すイベント「活性の火」のポスターにもエガオビルの写真があしらわれていた。実行委員長は「これでよいのかと問い掛けたかった」と話した。

   複雑な権利関係や訴訟もあって時間がかかり、解決が極めて難しいのは分かる。だが、どんな事情があろうと、今のままでいいと思っている人はいないはずだ。駅前を通るたび沈み込む気持ちをどう表現すればいいのか悩んでいたが先日、その正体が分かった気がした。「まちに誇りが持てない」。市の次期総合戦略策定のための会議で委員から出た言葉だ。(吉)

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