むかわ町出身で米澤電気商会(本社同町)専務の山本敦子さん(53)=平取町在住=は17日、胆振東部地震のチャリティーイベントを札幌市で開催する。絵手紙で温かみのある文字を書く伝筆(つてふで)や、絵本の読み聞かせなどをするセラピー講座を開き、収益の一部を同町に寄付する。地震の後、全国から励ましの手紙をもらった山本さんは「自分にできることを少しでもしたい」と考え、仲間と共に準備を進めている。
山本さんは同社平取営業所の所長として勤務する傍ら、5年ほど前に知り合いを通じて伝筆を知った。七つのこつを習得することで、くせ字をユニークで温かい文字に変えられることに魅力を感じ、札幌の講座に通って4年前、講師の資格を得た。現在は周辺の講師仲間と一緒に、むかわ町や平取町、苫小牧市などで講座を開いている。
昨年9月の胆振東部地震で本社が一部損壊し、倉庫も半壊した。1カ月間、従業員と共に顧客の電気や水道の復旧作業に無我夢中で取り組んだ。生まれ育ったむかわ町中心部の商店が被災し、取り壊される光景を見て心を痛め、実家に住む両親の心配をするなど疲労もたまっていった。
疲弊した山本さんを救ったのは、全国の仲間からの励ましの手紙だった。「今日も一日笑顔でね」「一歩ずつ」「みんなでひとつに」。温かい文字やパステルカラーの絵を見て心が和んだ。何百通と送られてきたため、同町役場や金融機関に寄贈した。
昨年9月に平取町で開催予定だった伝筆のイベントは、11月に延期して実施した。その際、伝筆協会(東京)の侑季蒼葉代表から声を掛けられたのをきっかけに、道内の講師約20人と「伝筆チーム北海道」を結成し、17日の催しを計画した。
イベントは、札幌市北区の札幌エルプラザで午後7時から。山本さんが地震後1年が経過したむかわ町の様子を語るほか、ハドロサウルス科の恐竜化石「カムイサウルス・ジャポニクス」(通称むかわ竜)を題材にした絵本のセラピー、伝筆体験セミナーなどを開く。参加費は1人4000円。
収益の一部は、11月にむかわ町へ寄付する。地震後、毎日同町に通う山本さんは「メインストリートで商店が倒壊して寂しい。町の復興はまだまだ」と受け止め、「多くの方に参加してもらい、伝筆の魅力を知ってもらいたい」と話した。