森の中でパチン、コツッ、パチッ、という音を聞いたことがありますか。ミズナラから落ちたドングリが倒木などに当たる音です。乾いた、跳ねるような音が耳に心地よく、まるで音楽を聴いているように楽しくなりました。ドングリが落ちる音が聞けるほどの豊作は数年ぶりで、これが私が感じた今年初めての「秋」でした。
ドングリだけではなく、森は「実りの秋」真っ最中です。そんな秋を紹介しようとビジターセンターでは落下した木の実を展示しています。中でもホオノキやキタコブシの実は初めて見る方が多いようで、赤く大きくトゲトゲしたホオノキの実、グニャっと曲がってゴツゴツしたキタコブシの実はとてもユニークな形です。モクレン科で花は多くの人になじみ深いモクレンにそっくりなので、「あのかれんな花からこんなに変わった形の実ができるのか」と驚いている方も多いです。
それらの実には1センチほどの種がたくさん詰まっています。園地ではカラスやキツツキなどの鳥たちがその種を食べに来ているのを見ることができます。これらの種は鳥が運ぶといわれています。鳥の排せつ物の中の消化し切れなかった種が発芽するそうで、遠くに木を生やすことができるそうです。
実から種を一つ取り出してみると、取り出した種と実をつなぐように白い糸が伸びることに気が付きました。さらに引っ張ると糸がもっと伸びました。不思議でした。種が落下しにくいような工夫でしょうか。ぶら下がれば目立つでしょう。たくさんの鳥に気付いてもらえるようにしているのでしょうか。
木の実と野鳥の関わりを見ながら、自然の仕組みを考えたり想像したりするのはとても楽しいです。
(支笏湖ビジターセンター自然解説員、吉田香織)