北海道文教大(渡部俊弘学長)はこのほど、劇作家・演出家の平田オリザさんによる講演会を同大で開いた。「読書・演劇・まちづくり」のタイトルで教育と文化について、大学や地域が取り組むべき事柄の視点が語られた。
恵庭の文化課題を明らかにし、発信することを目指した企画。教員と学生が主体となって講話者を招く今年度から開始した公開講座で、市民を含めた約50人が聴講した。
平田さんは今後の大学入試を展望。受験生の「協働性」「能動性」「多様性」を測る傾向が強まると予測し、「コミュニケーション力や味覚、マナー、美的感覚といった『身体的文化資本』や性差別、人種差別をしない考え方が求められる」と解説した。
ただ、こうした事柄を養う機会は都会に多いため地域格差が生じ、経済の格差よりも発見されにくい側面を指摘。成人までに受ける教育はその人の将来の健康や経済状況に絡む要因となるため、「十分な教育環境を整えることが生活保護などの事後分配を減らすことにもつながる」とした。
欧州で行われる取り組みとして、失業者が芸術に触れる機会の実例を挙げ、弱い立場の人が社会と接点を持つ重要性を解説。インターネット通販の普及による書店の減少について「本屋やライブハウスなどがまちの文化を支え、才能を育ててきた。それらに代わり多様な文化に触れられる機能が必要」と提案。「これからの学力は『学んだ力』ではなく『学ぶ力』」と再定義を呼び掛けた。
平田さんは、国内外で高く評価された戯曲「東京ノート」などを手掛け、現在は大阪大と東京芸術大の特任教授を務める。5日には市内緑町の複合施設「えにあす」でワークショップも行われた。