日本が、優勝候補のアイルランドを破った。ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会での奇跡の勝利に日本中が沸いた。W杯では岩手県釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムも会場になっている。東日本大震災の津波で全壊した釜石東中学校、鵜住居小学校の跡地に建てられた。
震災当日、釜石東中の生徒は隣の鵜住居小の児童の手を引き、高台に駆け上がった。逃げた生徒、児童は助かり「釜石の奇跡」と呼ばれた。だが、奇跡ではなかった。津波が来たら(家族や周りが心配でも)てんでばらばらに高台に逃げようと教える「津波てんでんこ」の言い伝えが古くからあり、長年の防災教育が子どもたちの中に根付いていたからだ。
「誰も勝つとは思っていない。誰も接戦になるとは思っていない。誰も僕らがどれだけ犠牲にしてきたか分からない。信じているのは僕たちだけ」と試合前、ジョセフ・ヘッドコーチは選手たちに語ったという。リーチ・マイケル主将も「勝てるという自信が一番」の勝因だったと振り返った。
前回W杯の1次リーグ敗退から4年、厳しい練習と努力の積み重ねが選手たちに自信を与え、勝利を呼び込んだ。奇跡のように見えることも、そこに至るまでには数々の営みがある。何もせず、ただ願うだけで奇跡は起きてはくれない。サモア戦、スコットランド戦でも強さを見せ付け、奇跡ではなかったと証明してほしい。(吉)