恵庭市本町のデイサービス、おしゃべりサロンでは、リハビリの一環として利用者が手作りした焼き菓子の販売に取り組んでいる。益金は日帰りの温泉旅行の費用に充て、利用者に還元。利用者にとってやりがいのあるリハビリを実現しようと、職員と地域のボランティアが力を合わせて奮闘している。
同サロンは、一般住宅を改装した施設で、認知症などを持つ利用者12人が自宅から通う。日常生活の行動全てをリハビリと捉え、介護器具を極力使用せず、利用者の身体機能を生かす方針が特徴だ。皿拭きや洗濯物を干すといった簡単な家事も日常的に行う。
利用者がやりがいを感じられる新しいリハビリを、と同サロンは今年7月から「おからパウンドケーキ」と「おからクッキー」を格安で販売し、益金を利用者に還元する事業をスタート。利用者が丹精込めて作った焼き菓子は、甘さ控えめでヘルシーな味わいが評判を呼び、売れ行きは好調。初売りから約2カ月の今月12日に丸駒温泉=千歳市=への日帰り旅行が実現した。
温泉旅行は同サロンにとって初の試み。事前に同温泉と打ち合わせを重ね、段差の高さや移動距離などを入念に確認。シミュレーションを重ねて準備を進めた。男性を家族風呂、女性は大浴場でそれぞれ介助され入浴。入浴後には支笏湖の景色を眺めながらレストランで一般の客と同様の食事をし、売店で買い物も楽しんだ。普段に比べて箸が進み、会話が明瞭になるなど利用者に良い変化も見られ、職員も手応えを感じていた。
利用者の小林克則さん(76)は「温泉にはなかなか来られないのでうれしい。温泉っていいなと思いながら風呂に入りました」と目尻を下げた。
市民ボランティアの協力も大きい。入浴の待ち時間や食事で利用者の話し相手となり、職員が介助に専念できる体制をつくった。ボランティアスタッフの菅野勝雄さん(74)は「話すことで利用者の方が笑顔になってくれるので、やりがいを感じます」と笑顔。
平間秀子施設長は「事故なく安全にできてよかった。今後も利用者にとってやりがいのあるリハビリを提供できたら」と述べた。