白老町の大町商店街で女性高齢者らが切り盛りする地域食堂「グランマ」の経営を担っていたNPO法人しらおい創造空間「蔵」が、9月末で同店の運営から撤退することが分かった。来店客の減少で厳しい経営が続いていることなどが理由。10月以降は、町内在住の個人や同店関係者が運営と店名を引き継ぐ予定で、地域の高齢者支援の新たな活動も模索している。
グランマは、2009年6月、地元の女性高齢者グループ「麻の会」が運営する地域食堂としてオープン。地元で収穫した山菜定食などの料理を提供し、高齢者の生きがいづくりを創出する店として全国的にも話題を呼んだ。高齢者の個性や能力を生かした店づくりが評価され、13年度には道知事表彰の「輝く北のチャレンジ賞」も受賞した。
来店客数は順調に増え、経営も軌道に乗ったものの、近年は減少傾向にあった。冬場は特に落ち込み、来店客が数人という日も。このため、食材の仕入れや店舗の賃貸料、有償ボランティアとして店を切り盛りする同会メンバーの日当などコストが重くのしかかり、今年に入ってからは一層厳しい経営が続いていた。
同店の経理事務に長く関わり、17年度から本格的に経営を担ってきたNPO法人しらおい創造空間「蔵」は、人手不足もあって経営の立て直しに向けた取り組みや、新たな活動の展開が難しいと判断。理事からの意見も踏まえ、今月末で同店の経営から退くことを決めた。
しかし、高齢者の生きがい創出という店の存在意義から、町内在住の20代の個人や同法人関係者が存続を模索。10月から経営を継承し運営していく準備を進めている。
グランマの運営継続に個人的に関わっていく同法人理事長の坂本譲さんによると、平均年齢80歳の店のスタッフ10人のうち、一部が引き続き働く意思を示している。店は現在、月曜日から土曜日の午前11時~午後2時に営業しているが、基本的に営業時間を変えず、現在の定休日(日曜日)を別の曜日に変更することを検討。また、定食など料理の提供を終える午後2時以降、「脳トレ教室」など高齢者の健康づくりや居場所づくりのために店舗を活用することも考えている。
さらに経営改善に向けて、店で作っている弁当の配達事業を強化。スギナやヨモギ、ドクダミ、ウマブドウなど地元の山野草を茶葉にした「山野草茶」の販路拡大に力を入れ、収入増につなげるという。
経営母体はいずれNPO法人などへ移行させ、グランマの機能を十分に発揮できる組織体制を整えていく考えで、坂本さんは「白老でも住民の高齢化が進む中、高齢者支援のグランマの存在はより重要になる。町内の若手が店の運営に意欲を見せており、10月から新たなスタートを切りたい」と話している。